ザ・バッド


 2015.3.25      オヤジたちの美術品にかける情熱が良い 【ザ・バッド】

                     


■ヒトコト感想

美術館の警備員たちが、自分の愛した美術品を盗み出そうとするコメディだ。美術品を愛するおじさんたちのキャラクターがすばらしい。モーガンフリーマンをはじめ、渋い俳優たちが、まぬけな行動を繰り返す。特に強烈なのは、彫刻を愛する元軍人のおやじだ。夜中に美術館に忍び込み、服を脱ぎ自分の肉体美にほれぼれしながら、彫刻の肉体に恋をする。

はたから見るととんでもない変態だが、当人はいたって真面目だ。妻に頭があがらないロジャーと絵画を愛するチャーリー、そして、肉体派警備員のジョージ。3人それぞれの個性がすばらしく、美術品を盗み出すまでのドタバタが秀逸だ。当人たちが、まじめであればあるほど面白く感じてしまう。

■ストーリー

美術館の警備員として人生を捧げて来たロジャーとチャーリー。ところが新任の館長によって館内の展示物が一新されることになり、2人の愛する絵画がデンマークへ送られる事を知り愕然としていた。なす術も無く、ロジャーはデンマークへ引っ越す事を考えるが到底無理な発想なので諦めかけていた。しかし、同じ悩みを抱えるチャーリーが自分たちの絵画を守るため盗み出そうと言い出す。

年老いた定年間近の警備員である自分たちにそんな大胆な行動は無理だと本気で取り合わなかったロジャーだが、同じように彫刻像に思い入れのある夜警担当ジョージの存在を知り計画に誘う。美術館のセキュリティーは強敵・・・。3人は入念な作戦会議を開き、予行練習を行い、美術館からお気に入りたちを盗み出す為に搬出作業当日の勤務に志願する。搬出作業の当日3人は美術館倉庫へ堂々と入り込み本物と贋作のすり替えの手筈を整える・・・。

■感想
長年、美術品を警備し続けた男が、美術品に愛着がわき、片時も離れたくないと思う。すでに、その感覚が一般的ではない。穴が開くほど見続けた絵に恋をする。家に帰れば、余生をリゾート地で過ごすことだけを考える妻がいる。ロジャーの境遇が面白い。

口うるさい妻の言葉は頭に入らず、絵のことだけを考える日々。ロジャーの中では、明らかに絵>妻だ。絵が移送されるデンマークに引っ越そうとまで考えるのは、かなり特殊な状況かもしれない。チャーリーとジョージの美術品に対する熱の入れようも同じだ。

美術品と離れたくない3人が考え出した答えは…。精巧な贋作を作り、取り換えるということだ。ここからのドタバタが面白い。まるでミッションインポッシブルのように、作戦を練る。ただ、まぬけな親父たちが公園で日向ぼっこしているようにしか見えない。

いざ、美術品が移設される時、ドタバタは極まる。定番的なアクシデントが発生し、ロジャーは妻からフロリダへ旅立つ飛行機に間に合わないと騒がれる。絶対絶命のピンチになりつつある状況から、無事抜け出すことができるのか…。

本作のポイントは、ラストにあるのだろう。ロジャーが愛した絵画は、浜辺で髪を手で押さえながらたたずむ女性の絵だ。愛する絵を手に入れたロジャーが、旅行先の浜辺で絵とまったく同じ情景を目にしてしまう。その女性というのは、なんと…。

ロジャーと妻とのドタバタした状況を考えると、この最後の流れは面白すぎる。絵の女性は若い女性だが、現実の女性は…。かなり無理やり感があるが、ロジャーから見た景色はそう見えているということなのだろう。

3人の親父たちのドタバタ感が良い。



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