2016.8.26 12歳には過酷すぎる旅 【タリスマン 上】
タリスマン 上巻 / スティーヴン キング / 新潮社 [文庫]
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■ヒトコト感想
癌をわずらった母親を助けるために異世界(テリトリー)へタリスマンを探しに向かうジャックの物語。異世界との行き来は黒人スピーディから貰った謎の飲み物のみ。異世界には現実世界と同一人物が分身者としていたりする。12歳のジャックの冒険は強烈だ。異世界では拷問され死の危険に直面する。現実世界ではヒッチハイクしながらの旅で、いつ補導されるかわからない。
ジャックに特別な能力があるわけでもなく、ジャックと同じく異世界へ行き来しているような人物もいる。ファンタジーあふれる流れで、上巻でのピークはジャックが異世界から偶然連れ帰ってしまった狼男との、現実世界でのヒッチハイクの旅だろう。12歳が経験するには苛酷すぎる現実だ。
■ストーリー
ジャック・ソーヤーは12歳、病身の母と2人、アメリカ東海岸の保養地でひっそり暮している。母の病気は癌らしい。ある日、さびれた遊園地で、ジャックは不思議な黒人スピーディに出会った。タリスマンがあれば母は助かる、そう彼は教えてくれた。タリスマンとは一体なんだろう?ジャックは独り試練の旅に出発する―母の生命を救うために。
■感想
異世界と現実世界とのリンクはあるようでない。が、異世界での出来事は形を変えて現実世界の事故として表現されている。異世界で分身者が死ねば、現実世界でも死ぬ。ジャックが入り込んだ異世界はとてつもなく危険に満ちている。
冒頭から異世界で怪しい人物として捕まってしまい、そこから激しい拷問にあうジャック。12歳の少年が直面する危機としてはすさまじすぎる。また、異世界の女王がジャックの母親の分身者というのもポイントだろう。まだ、上巻の段階ではタリスマンの存在はまったく明らかになっていない。
ジャックが異世界へ入り込むきっかけとなったスピーディの正体も明らかとならない。異世界と現実世界の繋がりも明確にはなっていない。が、ジャックは母親を助けるために異世界へと向かう。現実世界と異世界の危険の違いは異なっている。
異世界は死に直結している。現実世界では悪くても警察に拘留される程度だ。現実世界でジャックにとっていけすかない奴は、異世界ではジャックにとってとてつもなく危険な存在となっている。異世界の不気味さが物語のシリアス感を高めている。
異世界の危険から逃げ出すために現実世界に戻るジャック。そこで偶然にも狼男を現実世界につれてきてしまう。現実世界でのジャックと狼男ウルフの生活というのが、かなり興味深い。現実世界になじめないウフル。そして、フォローするジャック。
あやしげな風貌のウルフを連れて歩くことが、すでにジャックのリスクとなっている。タリスマンの手がかりや、異世界と現実世界との関係が下巻でどこまで明らかにされるのだろうか。ジャックの試練の旅は12歳が経験するのは過酷すぎる。
下巻でどこまで明らかとなるのだろうか。
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