タリスマン 下 スティーヴン・キング


 2016.9.16      放射能に汚染された焦土の衝撃 【タリスマン 下】

                     

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■ヒトコト感想
上巻ではジャックの状況やテリトリーの説明、そしてジャックを殺そうとする勢力の話が描かれていた。テリトリーから連れてきた狼男とジャックが現実世界で危機におちいる。テリトリーでの危機とはまた違った形での危機であり、そこでウルフが正体を表すことになる。ジャックの相棒が同級生のリチャードに代わってからは、ひたすらテリトリー内部でのタリスマン探しとなる。

そこで悪の根源であるスロートの存在がピックアップされることになる。現実世界とテリトリーを行き来し、母親を助けるために大冒険するジャック。とても12歳の少年とは思えないたくましさで大人たちに対抗している。タリスマンとは何なのか、最終的にはよくわからないが、物語としては十分成立している。

■ストーリー
この世界の向こう側には、背中合せにもう一つの世界がある。そこは科学ではなく魔法の支配する世界である。ジャックの母は向う側では女王で、やはり死の床にあるが、生命を救えるのはタリスマンだけだ。ジャックはどうしてもタリスマンを手に入れようと思う。2つの世界を跳躍しながら、西海岸への辛い旅を続けるジャック。―童心を失わない大人たちへのノスタルジアの贈り物。

■感想
現実世界でウルフと共に逃亡生活を続けるはずが…。ジャックに信じられないような苦難が次々と襲いかかる。現世では、ウルフはちょっと知的障害のある力が強い男のように思われるだろう。ジャックとウルフが現世で死の危機に直面するのは衝撃的だ。テリトリーとはまた違った意味で恐怖に満ちている現世。ジャックが現世においても追いかけられ続けるというのは、かなり強烈だ。

本来ならタリスマンを探すためにテリトリーを旅するはずが、現世での危機でウルフを失い、新たにリチャードという同級生を仲間に加えることになる。

テリトリーの世界はまるで暗黒世界のような描写が続いている。特に印象的なのは、放射能に汚染された焦土を列車で渡る場面だ。火の玉が動き回る世界。火の玉が放射能の塊を意味しているのか。近づくと放射能に汚染されてしまうようだ。作品が描かれた時代的に、放射能に関してのイメージがそのまま作品に描かれているようだ。まるで死の土地のような焦土。

狼男たちに追われながら、ライフルで反撃するジャックたち。このあたりは、ちょっとしたバイオレンスアクションの様相を呈している。

ようやくタリスマンにたどり着いたジャック。そこでジャックを追いかけ続ける者たちと対決することになる。テリトリーと現世との関係や、タリスマンの能力など、非常に濃密な内容となっている。母親を助けるために無茶な旅を続けてきたジャックと、父親が悪の権化のような存在となってしまったリチャードの苦悩。

タリスマンというのが結局何なのかわからず仕舞だが、頭の中でイメージしたのは大き目な水晶のようなものだ。人を助ける力のあるタリスマン。壮大な冒険のご褒美としては十分なものなのだろう。

12歳の少年が経験するには苛酷すぎる冒険だ。



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