民王 池井戸潤


 2015.10.8      爽快感ある総理と息子の入れ替わり 【民王】

                     
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■ヒトコト感想

ドラマを先に見た関係で、ドラマのイメージが頭に焼き付いている。原作である本作と、ドラマはかなりキャラ設定が異なるということがわかった。ドラマでは総理は気が強く、息子は気弱という、分かりやすい設定だったが、本作はその違いがあまりない。そのため、ドラマで総理になった息子が良い話をしんみりと語るのに比べ、本作ではかなり強気に暴言を含みながら言いたいことを言っている。

作者の作品の雰囲気としては合っている。それまで叩かれ続けた相手に対して、強烈なしっぺ返しを食らわせる。それも、相手が立ち直れないほど執拗にだ。政治に対しての作者の思いを作中のキャラクターたちに代弁させているようにすら思えてくる作品だ。

■ストーリー

夢かうつつか、新手のテロか? 総理と息子の非常事態が発生――。「お前ら、そんな仕事して恥ずかしいと思わないのか。目をさましやがれ! 」漢字の読めない政治家、酔っぱらい大臣、揚げ足取りのマスコミ、バカ大学生が入り乱れ、巨大な陰謀をめぐる痛快劇の幕が切って落とされた。総理の父とドラ息子が見つけた真実のカケラとは!? 謎が謎をよぶ、痛快政治エンタメ!

■感想
総理と息子が入れ替わる。この手の中身入れ替わりものは昔からある。ただ、入れ替わる相手が総理大臣というのは新しい。昨今の様々な政治のスキャンダルや不正をうまくアレンジし物語に組み込んでいる。一国の総理大臣が、閣僚の女性問題の話に翻弄されたり、ちょっとした失言で議会が滞ったり。

そのあたりの怒りの気持ちを、作中のキャラクターたちは思いっきりぶちまけている。かなり爽快な場面が多々ある。ファンタジーな部分もあるが、入れ替わりが総理親子だけでないというのも面白い部分だ。

息子が総理のふりをした場合、政治的な配慮は抜きにして、そのままおかしいと思ったことを口にする。ただ、国会の答弁で漢字が読めないというを面白おかしく描いている。現実の総理がひとつの読み間違いでかなり叩かれたのに比べ、本作の総理(息子)は、極端な読み間違いをする。

コメディの要素が強いのだが、その中で、主張したいことがしっかりと主張されているのは間違いない。さらには、別の親子入れ替わりともからめながら、ドラマに負けないドタバタが繰り広げられている。

息子が総理となると、総理が息子となる。就職活動中の息子の代わりに総理が面接を受ける。となると…。予想通り、面接官を圧倒的な迫力で論破してしまう。このあたり、かなり極端な描かれ方をしているが、非常に爽快感がある。面接する側とされる側という、明らかな力関係の違いがありながら、自分の主張を曲げない。

普通はできないことを、架空の物語の中であっても、誰かがやってのけてしまうのは、読んでいて気持ちが良い。現実には、そううまくはいくはずもないが、虚構の物語なので、特殊な面接官に気に入られることになるのはご愛嬌だ。

ドラマを見ていなくても当然楽しめるのだが、見た方がその違いを含めて楽しめるだろう。



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