素敵な日本人 


 2018.2.13      身近なミステリー短編集 【素敵な日本人】

                     
素敵な日本人 東野圭吾短編集 [ 東野圭吾 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
身近にある出来事?をテーマとしたミステリ短編集。特別なトリックや特殊な状況ではない。誰にでも経験がある場面や出来事なので頭の中では想像しやすい。そんなありきたりな場面で事件は起きる。身近だからこそ、ちょっとしたトリックでも衝撃度は大きい。特に「レンタルベビー」は近未来感にあふれ、さらには子供を育てることの大変さがこれでもかと語られている。

子育てを経験した人ならば、誰でも共感できることだろう。ラストの「水晶の数珠」は、強烈なインパクトがあり、ラストの流れも最高だ。思い出しても心がジーンと温かくなるような感じかもしれない。短編の中にはまったく印象に残らない短編もある。日常をベースにすると、良し悪しがよりはっきりでるような気がした。

■ストーリー
登場する人物がどこか知人に似ていたり、あなた自身にも経験のあるトラブルだったり、つい思い浮かべてしまう妄想の具現化だったり、読み心地はさまざま。ぜひ、ゆっくり読んでください。豊饒で多彩な短編ミステリーが、日常の倦怠をほぐします。

■感想
最も印象深いのは間違いなく「水晶の数珠」だ。父親に反抗してハリウッドを目指す直樹。父親からの遺言で代々伝わる家宝の話を聞くのだが…。父親と折り合いの悪い男が、父の死に目に会えず少しだけ後悔する。衝撃なのは、家宝である水晶の数珠の能力だ。

人生でただ一度だけ時間を戻してやり直しができる。では、直樹の父親はどこでその力を使ったのだろうか。父親がどこで誰のために使ったかがわかった時、ジワジワ感動がおしよせてくる。つい、自分だったらどのタイミングで使うかを考えてしまった。

「レンタルベビー」は、子育てを疑似体験したカップルの物語だ。未来の世界で本物の赤ちゃんと同じようなロボット赤ちゃんを育てるカップルがいる。若いカップルに子育てはどれだけ大変かということを思い知らせる類の短編かと思いきや…。最後にもうひとひねりある。

子育ては女にばかり負担がかかり、男は逃げ腰となる。耳が痛いことだが、それすらも想定どおりとなる。赤ちゃんロボットの面倒をみた結果、カップルは子育ての大変さがわかり、結婚を諦めるかと思いきや…。オチがもうひとつあるのが良い。

「10年目のバレンタインデー」は女の執念というか恐ろしさを感じずにはいられない。10年前に別れた女と再会する。男からすると、どこか昔に戻れるのではないかというワクワク感がある。その日がバレンタインデーなら、なおさら感じることがあるだろう。

良いイメージを想像しつつ、裏切られる。この裏切られ具合が良い。東野圭吾の昔の作品によくあるような、女の思いもよらないところからの恨みというのは、作中の主人公と同じように、驚くことだろう。

日常に在りそうな場面を用いたミステリー短編集だ。



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