空飛ぶタイヤ 下 池井戸潤


 2016.1.7      家宅捜索時のすさまじい一体感 【空飛ぶタイヤ 下】

                     
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■ヒトコト感想

ホープ自動車のリコール隠しを疑う中で、はっきりとした確証がないまま、物語は進んでいく。赤松の運送会社がジリジリと窮地におちいりはじめ、家族にまでその影響が出てき始める。強烈なのは、赤松の息子関連の話だ。PTA会長である赤松に突っかかるモンスターペアレントはすさまじい。

作者の作品の定番として、憎たらしいキャラクターに関しては最後の最後で強烈なカタルシスを味わうことができる。それは、リコール隠しに関することや、ホープ銀行が貸しはがしを行ったことも同様だ。ラストでは、信じ続けた赤松たちに明るい日が差すことになる。巨大企業のリコール隠しを暴く際の、警察組織の一体感もまた、読んでいて熱い気持ちになってくる。

■ストーリー

事故原因の革新に関わる衝撃の事実を知り、組織ぐるみのリコール隠しの疑いを抱いた赤松。だが、決定的な証拠がない。激しさを増す、大ホープグループの妨害工作。家族と社員を守るために、赤松はどうしても真実を証明しなければならないのだ――。

■感想
赤松とホープ自動車の対決以外に、いくつかのポイントがある。まず、事故を契機として始まった学校での子供の盗難騒ぎだ。モンペたちによる激しい攻撃。盗難事件の真実を赤松が暴いたとしても、逆ギレするモンペたち。ついには事故を引き合いにだして…。

読んでいてものすごくムカムカしてきた。関係ないことを引き合いにだし、自分の非を認めようとしない。そんなモンペたちにも、最後の最後には適切な審判が下ることになる。モンペたちが顔を青くして出ていく様が爽快だ。

ホープ自動車のリコール隠しを暴く過程で、週刊誌によるスクープがある。それに期待した赤松だが…。巨大企業としてあらゆるコネを使い逃げ切ろうとするホープ自動車。どのようにして赤松が対決していくのかと思いきや…。

警察がホープに疑いの目を向けた時が、本作の面白さのピークかもしれない。捜査方針の変更を余儀なくされた警察内部での批判。そして、ホープを家宅捜索しようと決めた時のなんとも言えない一体感。男たちの熱さが伝わってくる場面だ。

実際の事件をイメージさせる流れはすさまじい。まさに現実でも本作と同じような企業内部で事なかれ主義が横行していたのかもしれない。あと3年間逃げ切れば、リコールが必要な部品を搭載したトラックはなくなる。そんな逃げの姿勢の企業を一網打尽にするような流れが本作にはある。

しいたげられていた赤松たちが、最後の最後に報われる瞬間。それは貸しはがしをしてきたホープ銀行の担当者が無実に決まった赤松の元へ駆けつけた時、壮大なカタルシスを感じることができる。

やはり、作者はこの手のパターンの作品はピカイチだ。



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