白いしるし 


 2017.10.30      衝撃的な恋の終わり 【白いしるし】

                     
白いしるし 新潮文庫/西加奈子【著】
評価:3
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■ヒトコト感想
32歳独身女の夏目が絵描きの間島に恋をする物語。夏目を筆頭に登場してくる人物はどこか恋愛相手に対する執着が異常だ。恋愛状態となると、相手のことが良く見えない。相手の行動のひとつひとつが気になり、画廊の女店主や店の客としてくる若い女に対して妙な勘繰りをしてみたり。好きだという気持ちをいつ表現するのか。そして、その結果どうなるのか。

恋愛に臆病のように思えるが、異質だ。夏目と純粋に友達である瀬田についても、ごく普通のさっぱりとした男かと思いきや、後半にはその異常な考え方が明らかとなる。相手を想う気持ちが強ければ強いほど、それを表現できない辛さは自分にふりかかってくるのだろう。

■ストーリー
女32歳、独身。誰かにのめりこんで傷つくことを恐れ、恋を遠ざけていた夏目。間島の絵を一目見た瞬間、心は波立ち、持っていかれてしまう。走り出した恋に夢中の夏目と裏腹に、けして彼女だけのものにならない間島。触れるたび、募る想いに痛みは増して、夏目は笑えなくなった―。恋の終わりを知ることは、人を強くしてくれるのだろうか?ひりつく記憶が身体を貫く、超全身恋愛小説。

■感想
夏目は傷つくことを恐れ、恋愛からあえて遠ざかっていた。そんな夏目が瀬田の紹介で運命の男・間島と出会う。間島に対して、ストレートに好きだと告白できない夏目のモヤモヤ感はよくわかる。それでもどこか根本には異常な要素がある。

間島の絵を見た瞬間に劇的な恋に落ちる。会話するだけで楽しいのだが、決定的な告白はできない。それは、相手に恋人がいてフラれることを恐れるからだ。恋の終わりを知ることは人を強くするのだが、その前提として恋の終わりに耐えきらなければならない。

夏目の間島に対する恋心は強烈だ。ただ間島の気持ちがよくわからない状態は、夏目にとっては辛い状況だ。ふとしたきっかけで、間島とより親密となり恋が成就したかと思われたのだが…。例え肉体関係があったとしても、イコール恋人同士になったとは限らない。

間島が語る幼いころの思い。そして、衝撃的な現在の状況を語る。夏目の恋心を打ち砕く内容にしては、あまりに衝撃的すぎる。さらには、瀬田が実はとんでもない男だということにも気づくことになる。

瀬田と間島は、それぞれ表面上はごく普通の良い男だが、その内面には問題がある。瀬田の家には何匹ものネコが存在し、猫の耳をひっぱったからと、知り合いの女性を殴りつけ鼻を折ってしまう。どこが地雷かわからない。

瀬田も間島も近親相姦的な恋にのめり込んでいる。そして、それを知らされる女は、誰でもショックを受けることだろう。普通の恋愛物語ではない。登場するキャラクターたちが、どれも強烈な個性となっている。

夏目の恋の終わりは強烈だ。



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