白ゆき姫殺人事件


 2016.7.19      ターゲットにされた瞬間、逃げられない 【白ゆき姫殺人事件】

                     
白ゆき姫殺人事件【Blu-ray】 [ 井上真央 ]

■ヒトコト感想
原作との違いはさておき、映像化した場合のポイントはおさえられている。マスコミとネットの誘導により無実の罪をきせられた人物が、さも犯人のように誘導される物語だ。極度に情報化された社会の恐ろしさを感じずにはいられない流れだ。ワイドショーのコメンテーターなどが訳知り顔で話す場面や、ネット上でのリアルなやりとりは衝撃的だ。

ひとつの出来事も、話をする人が違えば、印象も大きく変わってくる。コメントに悪意があれば、それが独り歩きし、ひとつの真実となってしまう。追いつめられた美姫の恐怖はすさまじいものだろう。真犯人はやはり意外ではあるが、犯人を作り上げるマスコミとネット社会に鳥肌が立った。

■ストーリー

国定公園・しぐれ谷で誰もが認める美人OLが惨殺された。全身をめった刺しにされ、その後、火をつけられた不可解な殺人事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まる。彼女の名前は城野美姫(井上真央)。同期入社した被害者の三木典子(菜々緒)とは対照的に地味で特徴のないOLだ。

テレビ局でワイドショーを制作するディレクター・赤星雄治(綾野剛)は、彼女の行動に疑問を抱き、その足取りを追いかける。取材を通じてさまざまな噂を語り始める、美姫の同僚・同級生・家族・故郷の人々。

■感想
美人OLが殺害され、犯人をスクープしようとするTVディレクターの赤星目線の物語だ。赤星が取材するにつれ、城野美姫というOLが浮かび上がってくる。様々な証言から、もはや美姫が犯人であることは間違いないという流れとなる。

ネット上での情報は独り歩きし、美姫の個人情報が暴露される。ワイドショーでは美姫がいかにも犯人だという情報を立て続けに放送し続ける。赤星は最初に美姫が犯人だと感じてしまうと、そこからインタビュー相手に対しても先入観をもってインタビューしてしまう。

情報化社会の恐ろしさを感じさせる作品だ。観衆は赤星の取材状況を見ていると、もはや美姫が犯人に間違いないと思ってしまう。が、そこから美姫目線で物語の真実が明らかとなる。ひとつの出来事も、語る人が変わると印象も大きく変わってくる。

最初は美しくすばらしい美人OLと地味で目立たないダメな美姫という図式だったのが、実は違っていたと分かる。このあたりが、うまく映像化されている。美姫の周りの人物たちのちょっと癖のある受け答えもリアル感を増しているのだろう。

真犯人が誰かは、なかなかわからないだろう。それらしいそぶりは一切ない。美姫が犯人でない場合に、一番衝撃を受ける犯人であることは間違いない。原作ではネチネチと週刊誌などで身内が叩かれる部分まであったが映像化されると、両親がテレビ画面の前でモザイク越しにひたすら謝る場面がある。

美姫が犯人とは決まっていないにも関わらず、世間では美姫が犯人と決め付けている。この流れこそ本作の主張したい部分なのだろう。マスコミとネットの暴走を抑える術はまったくないということなのだろう。

ターゲットにされた瞬間、すべてが暴露されてしまうのは恐ろしすぎる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp