サクラサク


 2016.8.2      父親の認知症が家族をひとつに 【サクラサク】

                     
サクラサク [ 緒形直人 ]

■ヒトコト感想
仕事一筋で家族をかえりみなかった男が、父親の痴ほう症を機に心を入れかえる作品。父親が段々と痴ほう症の症状を露わにする場面は衝撃的だ。そして、父親の対応に苦慮する息子をよそに、家族たちはひたすら無関心を貫く。完全に家庭崩壊している。父親が、自分が老人性痴ほう症にかかっていると知りつつ生活しているのが辛い。

粗相をした際には、家族は誰も助けてくれず息子の俊介が帰ってくるまで、同じ体勢で待ち続ける。痴ほう症は非常に恐ろしい。人間の尊厳を根底から否定するような病気だ。家族側の視点も非常に冷たい。ある意味俊介の自業自得と言えなくもない。後半には罪滅ぼしのような行動の数々をくりかえすのだが…。なんだか前半の衝撃ばかりが印象に残っている。

■ストーリー

仕事一筋に生きてきた主人公・俊介(緒形直人)。だが父親(藤竜也)が認知症を発症したことをきっかけに、これまで避けてきた“家族"と向き合わざるを得なくなる。そこで俊介が見たものは、崩壊寸前の冷え切った家族の姿だった。すべてに背を向け続ける妻(南果歩)。何を考えているか分からない子供達。そして次第に薄れゆく父の記憶。

そんな父が、日々曖昧になる過去と現実の狭間でつぶやく。「春、満開の桜が美しかった…」俊介は父の頼りない記憶と言葉を胸に、強引に初めての家族旅行を決行する。その旅が父のためなのか、家族の再生のためなのか、俊介自身もまだ知らずにいた――。

■感想
簡単に言ってしまえば、仕事人間だった男が父親の認知症を機に家族関係を見直す物語だ。仕事一筋の男・俊介はあたりはソフトだが、家族に対しては仕事に熱中するあまり無関心になっていたようだ。その積み重ねが家族の崩壊につながる。

強烈なのは、奥さんの態度だ。秀介が何か言っても答えない。すぐに席をはずして同じ場所にいたくないという雰囲気をだしている。娘は多少秀介と交流はあるが、それも金目当てなだけ。息子とは会話がまったくない。絵に書いたような家庭崩壊だ。

父親が認知症を発症する。徘徊くらいならまだしも、家の中で便をもらしたり、坐りながらおしっこをもらしたり。家族は父親の粗相を片付けようとしない。まったく思いやりのない家族のように思えるが、実際に直面するとなかなか難しいことなのだろう。

父親のことを面倒みるのは秀介だけかと思いきや…。実は息子が人知れずおじいちゃんの面倒をみていたという流れだ。実は家族関係はそこまで崩れてはいなかった。まだかすかに修復の可能性があるということだろう。

父親の思い出の地を巡る旅。強引に家族を連れだした俊介。この時だけは、なぜか家族はしっかりとついてくる。なんとなく先は想像ができる。認知症でまったく会話できない父親が、ある時だけ急に正気に戻る。そして、思い出の地を探す旅が一気に進展する。

その過程で、家族との絆を見直し、お互い言いたいことを言い合うことで、家族関係も修復する。全体的に一昔前の作品のように思えてしまう。お涙頂戴ものとしての定番は抑えている。

父親が突然認知症になる。誰にでも起こりうることだ。



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