桜田門外ノ変


 2016.6.16      武士の壮絶な生き様を見せつけられた 【桜田門外ノ変】

                     
桜田門外ノ変 [ 大沢たかお ]

■ヒトコト感想
桜田門外の変は、日本史の授業レベルでの知識はある。が、深い内容までは知らない。アメリカから開国を迫られた日本が、改革を目指すため水戸藩士が立ち上がる。大老を殺害するという前代未聞の大事件を起すまでと、事件後の逃亡が描かれている。改革に協力するはずだった土佐藩の裏切り、そして、仲間であるはずの水戸藩の対応。

日本の未来を考えての行動は、すべて裏目にでることになる。殺害に成功した際の激しい高揚感から、土佐藩が挙兵しないと知った時の絶望感。命を賭けた行動が、ひとつの齟齬によりすべてが水の泡となる。死んでいった者たちは死んでも死にきれないだろう。関の逃亡生活は悲しみに満ちている。

■ストーリー

歴史的大事件である大老・井伊直弼暗殺事件を、襲撃の指揮を執った水戸藩士・関鉄之介をはじめとする襲撃者たちの事件へと至った過程や、逃亡の果てに迎える運命を描いた歴史時代劇。

■感想
桜田門外の変の詳細は知らない。水戸藩士の反乱というイメージがあったのだが、本作ではその水戸藩士側から描かれている。井伊直助は極悪なキャラクターとして存在し、水戸藩士の関はこれでもかと好青年に描かれている。

決起するその他の水戸藩士たちは、すべて皆、目がキラキラし希望と情熱に満ち溢れている。日本を変えるために立ち上がった者たちの無謀な策略は成功し、あとは協力者と兵を起こし、幕府を打倒すと思いきや…。ここで予定外のことが起こる。

命を賭けた行動の結末としてはあまりにさみしすぎる。見事井伊直助を打倒した後、うまく逃げおおせた者も囚われてしまう。その他、事件を企てた幹部たちも次々とつかまっていく。四面楚歌の状態に陥った関たちの閉塞感はすさまじい。

行くも地獄、戻るも地獄の状態でどのような決断をするのか。仲間たちが捕まり次々と処刑されていく中での武士たちの生き様は強烈だ。特に親子で大阪に隠れていた藩士は、切腹する際に店先では店が汚れるということで、民家の座敷を借り、そこで切腹したすさまじい生き様だ。

関は最後まであがく。あがくといっても見苦しいものではなく、最後まであきらめない執念のような感じだ。妻や息子が肩身の狭い思いをし、お尋ね者として同じ水戸藩の者たちから追われることになる。関の背筋がピンと伸びた姿勢で相手を見据え、たとえ捕縛される時でさえ、どこかきりりとした凛々しさを感じてしまう。

関たちを追いかける者たちの中にも、丸腰の相手を襲うのは気が引けると、関に刀を渡し、一騎打ちをし切られていく武士もいる。この時代の武士の壮絶な姿を連続して見せられる感じだ。

死を選ぶ武士たちのすさまじさが伝わってくる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp