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　2016.5.9 　　 　　少年ジャンプ的な展開　【逆島断雄と進駐官養成高校の決闘】

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逆島断雄と進駐官養成高校の決闘 [ 石田衣良 ]
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■ヒトコト感想
軍隊の幹部を育てる学校・進駐官養成高校。ここに入学した断雄に様々な出来事がふりかかる。経済成長が止まり、世界的な戦国時代となる世界。エリート養成高校での権力争いや仲間たちとの青春。そして、暗殺や格闘まで。断雄の周りには、はちゃめちゃに明るいキャラや、気難しい肉体派や学内成績１番の男やいやらしいライバルキャラなど定番的なキャラたちがそろっている。

銃での暗殺描写や、脳をクロックアップして素早い動作を可能とする「止水」。相手の動作をスローにする催眠「呑龍」まで、マンガ的な要素が多い。まるで少年ジャンプに連載されている軍隊格闘青春マンガのようだ。すべてが定番的なので、新しさはない。この手のタイプが好きな人は楽しめるだろう。

■ストーリー
優秀な軍人を育てるため、非人間的ともいえる厳しいカリキュラムのなかで、断雄は同室同班となった仲間、あらゆるジャンルで学年一位の超イケメン・ジョージ、硬派の柔術家・テル、ナンパだが度胸が据わっているクニの三人との友情を育んでいく。

ところが、入学早々に起こった謎の狙撃事件を皮切りに、断雄の周りでは次々と不可解な事件が起こる。そして、それらの事件の裏側に、皇室を巻き込んで国家転覆を謀るクーデター計画が浮かび上がってきた。その勢力にとって、反クーデター派の信望があつい逆島家の子息・断雄は抹殺すべき対象だったのだ……。

■感想
これ以上の経済成長が見込めず、世界が植民地政策へと動き出す時代。日本を連想させる国に住む断雄は、軍の幹部養成学校に入学する。そこで仲間たちと出会い、権力争いや暗殺騒ぎに巻き込まれ青春とは縁遠い辛い高校生活を過ごす。

断雄の仲間たちは、少年マンガの主人公たちをサポートする定番キャラたちだ。超絶に優秀なジョージ、底抜けに明るいクニ、肉体派のテル。そして、常に断雄をライバル視するカザン。ヒロインとしてはカザンの双子の妹であるサイコ。この説明だけで少年マンガ的要素がふんだんに盛り込まれていることがわかるだろう。

断雄は意識せずとも美女にモテたりする。なんだかわかりやすい展開で、絵が頭の中に想像できてしまう。クーデターあり、暗殺騒ぎあり。訓練中に生徒が死ぬことは日常になる高校というのが、すでにとんでもない。頭脳や肉体の成績がすべての高校で、ヒエラルキーが作り上げられ、権力争いが勃発する。

断雄は家に代々伝わる「止水」を使うことができる。対するカザンは相手の動きをスローにさせる催眠術「呑龍」を使う。なんだかこの手の必殺技が登場すると、まさに少年マンガとしか思えなくなってしまった。

シリーズとして続くのだろう。ラストではクラス内での格闘トーナメントが始まり、定番的に決勝で断雄とカザンが対決することになる。裏では怪しげな新兵器の話や、クーデターの話があり、多数の伏線はすべて回収されたわけではない。

ステレオタイプな格闘マンガ的展開のため、好きな人にはたまらないだろう。ただ、キャラやそれぞれの説明が非常に薄っぺらい。すべての要素の表面をなぞるように詰め込んだ感じなので、マンガのように絵があれば良いのだが、薄っぺらさを如実に感じてしまう。

少年ジャンプ的な格闘マンガが好きな人にはたまらないだろう。