最強のふたり


 2015.2.13      すばらしい二人の関係性 【最強のふたり】

                     


■ヒトコト感想

無職黒人ドリスと障碍を持つ大富豪フィリップの交流。実話ということに驚き、実話ゆえに特別なラストではない。他人の同情にうんざりしていたフィリップが、おふざけでドリスを雇う。ドリスの、客観的に見ると無礼な態度が、実はフィリップには新鮮だった。ドリスはフィリップの障碍のことを考えない態度をとっていただけだろう。それがフィリップには自分を健常者と同じ扱いをしてくれたと喜ばせる。

一歩間違えれば、激怒してもおかしくないようなドリスの行動の数々。それらを許す度量の広さと、フィリップが今までどれだけ窮屈な生活をしていたかがわかる物語だ。この手の物語は、最後の最後で落とし穴があるのが定番だが、実話ベースなのでサラリと終わっている。

■ストーリー

ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ。何もかもが正反対のふたりが、事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。

その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ──だが、ふたりとも偽善を憎み本音で生きる姿勢は同じだった。

■感想
スラム出身のドリスと大富豪のフィリップ。首から下がまったく動かないフィリップの状況を見た時のドリスの表情はなんとも面白い。そして、その先がさらに強烈だ。フィリップが障碍者ということをまったく気にかけないドリスの行動の数々。

電話がなれば、サラリと携帯をフィリップに向けて差し出す。フィリップは手を動かすことができないので、ただ眺めるしかない。普通に考えれば、もう少し障碍者の立場に立って行動をすべきだと思うのだが…。ドリスの自由奔放さがすばらしい。

大富豪だけに周りから大事に扱われてきたフィリップ。反抗的な娘に対しても、周りは何も言わない。そんな状況を変えたのがドリスだ。ドリス的にはただ思ったことを口にしているだけだが、フィリップからしたら、イチイチすべてが新鮮なのだろう。

フィリップとドリスの信頼関係は、フィリップが経験したことのない世界をドリスが持ってきてから強まることになる。フィリップの楽しそうな表情が秀逸だ。フィリップの障碍をギャグとしてからかうなど、普通はできない。ドリスの無神経さが逆にフィリップには心地良いのだろう。

実話ベースなので衝撃的な結末があるわけではない。ドリスのうまくいきすぎる流れに、落とし穴がありそうな気がしたが、そうはならない。一度、ドリス以外がフィリップの面倒を見たが、そこでフィリップは癇癪を起こす。戻ってきたドリスとフィリップの関係性はやはりすばらしい。

髭面のフィリップの髭をそりながら、様々な形にして遊ぶドリス。フィリップは何も手をだすことができない。フィリップが動けないことを良いことにめちゃくちゃなことをしているが、それを楽しそうにしているフィリップの表情がすばらしい。

人は何を心地良いと感じるかわからない。世間の常識とはかけ離れた絆がふたりにはあるようだ。



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