龍三と七人の子分たち


 2018.1.26      ヤクザ社会にも高齢化の波が 【龍三と七人の子分たち】

                     
龍三と七人の子分たち [ 藤竜也 ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
引退した元ヤクザの老人たちが、再び組を作りヤクザ稼業をスタートさせる。現実の世界では弱者の立場にあるはずの老人たちが、あべこべに相手を脅す。オレオレ詐欺や、高額な布団販売の詐欺などのターゲットとされる老人たちが、実はヤクザだった。詐欺師たちは、相手がヤクザだとわかると途端に表情が変わるのが面白い。

龍三たちヤクザは、昔ながらの任侠の世界なので、現在にはそぐわない。現代に昔ながらのヤクザが登場したらどうなるのか。それを面白おかしく描いている。老人たちは生き生きとしている。ヨボヨボの爺さんが銃をぶっぱなす。高齢化社会を如実に現している?作品なのだろう。こんな老人たちが周りにいると恐ろしくなる。

■ストーリー
70歳の高橋龍三は、引退した元ヤクザ。“鬼の龍三”と畏れ慕われた時代はもはや過去のもの。現在は家族にも相手にされず、社会にも居場所がなく、息子の家に肩身の狭い思いで身を寄せながら、「義理も人情もありゃしねぇ」と世知辛い世の中を嘆いている。

ある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族の京浜連合と因縁めいた関係になった龍三は、「若いヤツらに勝手な真似はさせられねぇ」と、昔の仲間に招集をかける。集まったのは、プルプルと震える手で拳銃を構えるジジイ、足下がおぼつかないジジイ、未だに特攻隊気分のジジイなど7人。

どうせ先は長くないのだからと盛り上がった龍三たちは勢いで「一龍会」を結成し、京浜連合のやることをことごとく邪魔しまくる。当然、京浜連合のチンピラたちは、調子に乗り始めたジジイたちを疎ましく思うようになる。そして一龍会vs.京浜連合の対立は、龍三や子分の家族を巻き込んだ一大騒動へと発展する……!

■感想
昔は暴れん坊として恐れられた龍三。今は家族に相手にされないさびしい老人だ。そんな老人たちが、一念発起しヤクザの組を立ち上げる。現在の社会では暴力団は排除される方向にある。代わりに元暴走族の京浜連合が幅をきかせてくる。

オレオレ詐欺や高額の布団販売など、老人をターゲットとした詐欺に関わる京浜連合。詐欺師たちは運悪く龍三たちへ詐欺を働こうとする。このパターンが最高に面白い。相手はか弱い老人かと思いきや、出てきたのは刺青をいれた攻撃的な老人たち。詐欺師の唖然とした表情が良い。

元ヤクザといえども老人らしい面が如実に現れている。体をアチコチ痛め、マッサージに行く。孫や家族に頭があがらない。入院していた病院ではやっかいもの扱いされる。それらと相反するように、昔ながらの任侠ヤクザとして活動しようとする。

組の運営資金を手に入れるために街宣車を用意するのだが…。龍三の息子が務める会社に街宣車で乗り込んだりと、常にやることが裏目にでるのが良い。京浜連合との対決の場面でも、ジジイたちのむちゃくちゃな行動が、京浜連合たちをおののかせている。

見た目はいかつい老人たちだが、やることが少しまぬけなのが良い。ドスをきかせて相手を脅すシーンは迫力がある。ただ、ドスを振り回したり、足元がおぼつかない状態での暴力はなんだか危なっかしい。龍三とその仲間たちは、仲間が殺されたことを恨んで京浜連合へと乗り込み、そこで大暴れする。

京浜連合は反グレのことなのだろう。現実ではヤクザよりも反グレの方がむちゃをするという流れなのだが、本作では、昔ながらのヤクザのむちゃくちゃ加減に反グレたちが降参したという感じだ。

元ヤクザの老人たちは、みな妙に笑えてくる。



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