2015.5.25 おじさん版ローマの休日 【ローマ法王の休日】
■ヒトコト感想
ローマ法王の扱いがどのようなものなのか。ローマ法王を面白おかしく揶揄することが許されるのか。ローマ法王に選ばれることを嫌がる枢機卿たち。そして、選ばれたプレッシャーからローマ法王が逃げ出してしまう。日本で言うところの皇太子が、天皇陛下になることを嫌がって逃げ出すということなのだろうか。ローマの街に逃げ出したローマ法王。
さながらローマの休日的な展開かと思いきや、昔から俳優になりたいという夢があったことがポイントなのだろう。さらに面白いのは、ローマ法王をなだめるために精神科医が登場してくるところだ。この精神科医の言葉が辛辣だがやけに面白い。新法王が戻ってくるまで礼拝堂に閉じ込められ、その鬱憤を晴らすように様々な提案をする。こんな作品が許されることがすごい。
■ストーリー
ローマ法王死去―。この一大事を受けヴァチカンで開催される法王選挙(コンクラーヴェ)。聖ペドロ広場には、新法王誕生を祝福しようと民衆が集まり、世紀の瞬間を心待ちにしている。そんな中、投票会場のシスティーナ礼拝堂に集められた各国の枢機卿たちは、全員が必死に祈っていた。
「神様、一生のお願いです。どうか私が選ばれませんように―。」祈りも空しく新法王に選ばれてしまったのは、ダークホースのメルヴィル。彼は早速バルコニーにて大観衆を前に演説をしなければならないが、あまりのプレッシャーからローマの街に逃げ出してしまい…。
あわてた事務局広報は、なんとかコトが外界にバレないよう画策。街中に捜索の網を張る。一方メルヴィルは街の人々との触れ合いを通し、人生とは、人の信仰心や真心とは、そして“法王"の存在意義とは何かを見つめ直していくが、演台に戻らねばならない時間は迫っていた。果たして、ローマの街で彼が見つけた大切な答えとは―?
■感想
新しいローマ法王を決めるための法王選挙(コンクラーヴェ)が開催される。各国の枢機卿たちがローマ法王に選ばれることを嫌がるという描写が新鮮だ。こんな流れを映画作品として描いて問題にならないのだろうか?ローマ法王を題材としてコメディ作品を作り上げてしまう懐の深さに驚いてしまう。
日本で天皇陛下をテーマとしたコメディ作品なんてのを描こうものなら、各所からクレームの嵐となるだろう。ローマ法王に選ばれたメルヴィルは、そのプレッシャーから街に逃げ出してしまう。精神科医に診断されて、ある種のうつ病のように診断されたりもする。強烈な流れだ。
新法王が礼拝堂から抜け出し、街へ繰り出す。普通の服を着ていれば、どこにでもいるごく普通のおじさんでしかない新法王。役者になることを夢見ていたおじさんが、ローマ法王のプレッシャーから逃れるために現実逃避し、舞台俳優たちへ憧れの目を向ける。
なんとなくだが、ローマの休日のおじさん版に思えなくもない。枢機卿だとしても、普通の人間。夢もあれば、やりたいこともある。ローマ法王になることのプレッシャーの大きさというのは、計り知れないものなんだろう。見方を変えるとローマ法王を否定しているように見えなくもない。
ローマ法王の精神状態をチェックする精神科医が強烈に面白い。礼拝堂から出れないからと、枢機卿たちに様々な助言をする。様々な精神分析や、枢機卿たちをそれぞれの国の大陸でチームにわけ、バレーボール大会を開いたりもする。
老人たちがバレーボールをする。礼拝堂に土を引き、即席のコートを作る。なんだかぶっ飛んでおり、どことなくバカにしているようにも見える。ローマ法王をコメディ映画として扱うことが、タブーではないイタリアのすごさ。宗教を扱うのは難しいはずだが、絶妙なさじ加減で揶揄しているのが良いのだろう。
日本では絶対に考えられない作風だ。
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