利休にたずねよ


 2017.1.30      美しい利休の所作 【利休にたずねよ】

                     
評価:3

■ヒトコト感想
千利休を描いた作品。織田信長に重用され豊臣秀吉にも重用されつつも、最後は秀吉の激しい嫉妬により切腹に追い込まれた利休の物語だ。まず強烈なのは、利休の相手を圧倒する低い声だ。市川海老蔵が演じているのだが、歌舞伎の動きを取り入れているのか、利休の動きがとても丁寧で美しく見えた。天下人である織田信長に尋ねられたとしても、凛として自分の考えを主張する。

秀吉に至っては、あからさまに態度には出さないにしても、どこか美をわからない者という見下した気持ちを感じさせる流れだ。秀吉が嫉妬に狂い、利休の人気を妬み無理難題を押し付け最後には切腹に追い込む。利休がすばらしい人物であり、秀吉が小物だという描かれ方をしているので、利休がすばらしく見えるのは当然だろう。

■ストーリー
千利休の人物像を新たな解釈で描いた山本兼一の直木賞受賞作を映画化。織田信長に重用され、豊臣秀吉の下“天下一宗匠”として名を馳せながらも、秀吉の怒りを買い切腹を命じられた茶人・千利休が遺した謎と生涯秘め続けた恋を描く。

■感想
昔はやんちゃだった利休が、様々な経験を積むことで今に至る。利休が時の天下人に重用されるに至ったきっかけが冒頭から描かれていく。織田信長をうならせる素晴らしい茶器や舶来からの貢物に対して、独自の見解を示し、信長をうならせる。

利休が落ち着いた表情と言葉で相手を諭していく。信長は利休を重用し、信長の部下である秀吉は、利休に対して下手にでている。そこから信長が死に秀吉が権力を握ると、関係性が変わってくる。中盤まではまだ秀吉はそこまで利休を目の仇にはしていない。それが後半へ向かうにつれ激しい嫉妬を示すことになる。

利休と秀吉の関係が本作のメインなのだろう。利休の作った茶室にいちゃもんをつける秀吉の家来たち。民から人気のある利休に嫉妬する秀吉。利休独自の美に対する執着と、他者を圧倒する美がすべてを凌駕するのだろう。何かに悩むとたちまち利休が茶をたてる。

そこに答えが示されており、誰もが利休の力に敬服することになる。後半では利休が常に持ち歩く女の爪の理由が語られることになる。やんちゃなころの利休がひとりの女を愛することで変わっていく。その愛が成就せずに終わったからこそ、より強い執着となったのだろう。

正直、利休のことはよく知らない。が、時の権力者に重用された理由がなんとなくわかった気がした。圧倒的な美の力。まるでとんちのように、利休が少し手を加えることでその場の空気が変わり美しい場が出来上がる。

他者を圧倒する美というのはすばらしい。そして、美に対して絶対的な自信を利休が持っていることもすばらしい。市川海老蔵の演技と動きが、利休の迫力を生み出している要因のひとつだ。利休をよく知らなくとも純粋な物語として楽しめるだろう。

脇を固める俳優たちも、ベストな布陣のように感じた。



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