ペイジン 上 真山仁


 2015.8.31      メンツの国、中国での原発 【ペイジン 上】

                     
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■ヒトコト感想

冒頭から中国で建設中の原発の問題が描かれている。非常用電源を確保するためのディーゼル発電機の問題だ。本作が描かれたのは福島の事故が起こる前。そんな時期に、福島での事故の要因となったことをリスクとして割り出しているのはすごい。まるで福島原発の事故を予言しているようだ。北京五輪を控えた中国で世界最大の原発を作ることの困難さが描かれている。

中国人はメンツを大切にし、いい加減な仕事をすることも多々ある。原発という極度に精密で正確な作業が必要な設備で、中国人が中心となり完成させることができるのか。技術顧問に就任した田島の苦難に満ちた中国での仕事が描かれている。中国人がメンツに強烈にこだわる部分が描かれている。

■ストーリー

中国の威信を賭けた北京五輪の開幕直前。開会式に中継される“運転開始”を控えた世界最大規模の原子力発電所では、日本人技術顧問の田嶋が、若き中国共産党幹部・鄧に拘束されていた。このままでは未曾有の大惨事に繋がりかねない。最大の危機に田嶋はどう立ち向かうのか――。

■感想
北京五輪の開幕と同時に世界最大規模の原発の運転を開始する。そのことを史上命題とした中国人たちは、些細な問題には目をつむり、是が非でも運転を開始しようとする。対して技術顧問である田島は慎重な姿勢をとる。

中国人の仕事に対するスタンスと、目的を達成するためには手段を選ばない考え方。そして、何よりも面子を重視するお国柄。原発後進国である中国に巨大な原発を作る使命をおびた田島は、今までのやり方が通じない現実に困惑する。日本人の誰もが中国人と仕事をして感じる困惑だ。

中国式の仕事の仕方になじめずノイローゼとなった前任者から仕事を引きついだ田島。不正を暴こうとする若き共産党幹部の鄧と反目し、時には協力し合いながら原発建設をすすめていく。原発の重要な設備を作る技術力がない中国企業であっても、国策プロジェクトのために外すことはできない。

原発事故が起こることが眼に見えて明らかな状態であっても建設を進めるべきか。田島の苦悩はメンツの国中国をどのようにして顔を立てながら、自分の思う方向へと誘導していくかにかかっている。

田島の画策と共に、物事を正しい方向へと導こうとする鄧の存在がある。田島があけすけに中国企業の技術力の無さを指摘したとしても、それが事実であれば受け入れる鄧。土壇場で、北京五輪開幕に原発を強引に稼働させようとする冒頭の描写からすると、過去の田島とのやりとりは、非常に好感がもてる。

正義に燃える鄧が、どのような経緯で形だけでも運転開始をさせたいと思うよう、心境が変化したのか。下巻では、建設中の原発が完成に近づく過程での変化が描かれることだろう。

原発事故を予言するような流れにはしびれてしまう。



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