オネスティ 石田衣良


 2015.4.24      どうもしっくりこない、純愛? 【オネスティ】

                     
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■ヒトコト感想

幼馴染のカイとミノリが、お互いの性については赤裸々に語るが、決して肉体関係を結ぶことはない。肉体的な繋がりはないが、精神的な繋がりに満ちている。お互いパートナーがいるにも関わらず、隠れて精神的なつながりを保ち続ける。プラトニックな恋愛とは違う、お互いの性的経験を漏らさず報告するが、それだけ。

かなりいびつな関係であり、それぞれのパートナーにとっては辛いことでしかない。ミノリが性に積極的でカイは保守的。カイの気持ちは分からなくもない。ただ、カイの心の奥底では、ミノリと関係を持ちたがっているように思えた。逆にミノリの気持ちはわからない。というか、不自然な関係を提案したのはミノリからで、その考え自体に違和感がありすぎる。

■ストーリー

丘の上に建つ二軒の家。それぞれに住む同い年のカイとミノリは、幼なじみとして育つ。家のそばにそびえるケヤキの木の下が、二人にとって大切な場所だった―。「おたがい大好きだけど、恋愛も結婚もしない。どんな秘密もつくらない」幼なじみ二人が交わした約束。純粋すぎる愛の行方は

■感想
幼馴染のカイとミノリ。カイは絵を描くことに心血を注ぎ、ミノリは都会へでることにあこがれる。それぞれの両親が仲の良い家族ではないので、結婚に対して拒否反応を示すミノリ。幼馴染として、お互い隠し事なく、お互いの性的な趣向まですべて報告し合う関係となる。

まず、このカイとミノリの関係は歪だ。いつオナニーしただとか、誰を思い浮かべてなんてのは、かなり恥ずかしいことだが、それをお互い報告し合うほど親密な関係でありながら、決して肉体関係を結ぶことはない。

客観的に考えるとカイはごく普通の恋愛をし結婚している。対してミノリは男をとっかえひっかえして、男遊びが激しい。誰と寝たとか、男の話をカイに対して詳細に報告するミノリ。それをマジメに聞くカイ。正常ではない関係だが、読む人によっては純愛に感じるのだろうか。

人の恋愛話を聞くだけでもめんどくさくなる自分としては、人の性的な話をあえて聞きたくはない。まして、幼馴染として、気になる存在の女の子の話など聞きたくもない。カイはミノリに流されるまま、歪な関係を続けているように思えた。

純粋すぎる愛の行方は、カイとミノリのお互いのパートナーに波及する。肉体関係はないが、精神的な繋がりはある。それはカイの奥さんが何かしら感づくように、気付いていながら大きく非難できない事柄でもある。

ラストはカイが、ミノリを選ぶのかそれとも奥さんを選ぶかという状況に陥っている。そして、カイが選んだのは…。この結論はどのように感じるのか、人それぞれだろう。自分としては、かなり納得はできない。最後にはカイは自分の奥さんを選んでほしかった。

作者が描くこの手の純愛系は、常に何かひっかかるものがある



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