2015.11.30 老人たちが日本をリセットする 【オールド・テロリスト】
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■ヒトコト感想
老人たちがテロを起こす物語。序盤ではテロ組織が謎のベールにつつまれており、ただ若者が突然テロ活動をする物語となっている。まず、このテロが非常に強烈だ。NHKのロビーでの火災。自転車を運転している男の首を切断。そして、映画館での毒物散布と火炎地獄。テロを実行する人物は人間味がない。そのことが逆に恐ろしくもある。
老人たちにマインドコントロールされた若者たちが、独自に動きテロを実行する。老人たちの一貫した主張は強烈だ。さらには、何かを実現するために犠牲がでるのはしょうがない、というスタンスが恐ろしさを際立たせている。真顔で人の首を日本刀で一刀両断できるような老人たちだ。現在の日本がダメだから一度リセットする。その考え方は老人ならではなのかもしれない。
■ストーリー
「年寄りの冷や水とはよく言ったものだ。年寄りは、寒中水泳などすべきじゃない。別に元気じゃなくてもいいし、がんばることもない。年寄りは、静かに暮らし、あとはテロをやって歴史を変えればそれでいいんだ」怒れる老人たち、粛々と暴走す。
■感想
地位も名誉も金もある老人たちが、本気でテロを実現しようとしたらどうなるのか。フリーライターのセキグチが、老人たちのテロを目撃する役目を負わされる。まず主人公のセキグチが情緒不安定であり、常に安定剤を欠かせない人物というのが大きいのだろう。
正常の判断力はないにしても、セキグチが感じる恐怖感がすさまじいので、読者にもその恐怖が伝染してしまう。セキグチにだけ、次にテロが起こる場所を知らされ、その場に居合わせたセキグチには、テロを詳細に報道する役目がある。テロ現場の描写がすさまじいため、その他の印象が希薄になってしまう。
セキグチと共に行動するトラウマを抱えた女性カツラギも強烈だ。幼いころに叔父にアナルを犯された女性。セキグチと行動を共にすることで、精神の安定を得ているようだが、時に発生する突発的な行動が強烈だ。
テロリストグループの老人たちは、セキグチやカツラギを恐怖のどん底に突き落とすだけのインパクトがある。老人たちのテロを止めるでもなく、協力するでもないセキグチたち。単純に、恐怖により思考停止状態になったというのが正しいのかもしれない。現実にこんな老人たちがいたらと思うと、鳥肌が立ってしまう。
老人たちの目的は日本をリセットすること。そのための近道として原発を攻撃することにある。作者のこの手のテロ関連の物語は非常に分析されており、真実に近いような気がした。作中で語られているのは、実際に原発を攻撃しなくとも、攻撃する用意があり、誰も止められない状況であれば、それだけで日本はリセットされるらしい。
非常に説明が理路整然としており、今の日本がダメで、どうなるかが語られている。老人たちの考えがすべて正しいとは思わない。が、何か感化される部分があることは間違いない。
老人たちがテロを起こし死に急ぐ。それは、国として正常ではないのだろう。
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