屋上の道化たち 島田荘司


 2016.10.20      絶対に自殺しない者が自殺する場所 【屋上の道化たち】

                     

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■ヒトコト感想
御手洗潔シリーズ。グリコの看板を連想させるような看板の話から始まり、銀行のビルの屋上から次々と人が自殺していく事件へと繋がっていく。グリコの看板は前準備でしかない。ただ、この前準備にかなりのページが割かれている。カギとなる人物のバックグラウンドから描き、自殺するはずのない人々についても描く。

そして、満を持して登場してくるのは御手洗なのだが、解決編はイマイチ盛り上がりにかけている。3人が3人とも、屋上に上がる前には「自分は絶対に自殺なんてしない」と宣言しつつ、自殺してしまう。その奇妙さのオチとしては、期待したほど特殊なものではなかった。周りのエピソードも、はたして必要だったのか、疑問が残る。

■ストーリー
まったく自殺する気がないのに、その銀行ビルの屋上に上がった男女は次々と飛びおりて、死んでしまう。いったい、なぜ? 「屋上の呪い」をめぐる、あまりにも不可思議な謎を解き明かせるのは、名探偵・御手洗潔しかいない!

■感想
「屋上の呪い」をこれでもかと印象付け、現実的な答えをオチとして描く。ただ、解明されたオチがそこまで驚きはなく、少し無理があるのでは?と思えてしまう。銀行のビルの屋上から、絶対に飛び降りるはずのない人物が飛び降り自殺する。

見た目は不細工だがトム・クルーズ似の男を捕まえ結婚間近であった女性・岩崎。あえてこの岩崎のエピソードを細かく描いたことに、どのような意味があったのだろうか。女友達とのマウンティングでは負け続けていた岩崎が、イケメンの男を捕まえ友達に自慢できるはずが…。

岩崎が自殺すると、それを見に行った次の者がまたしても自殺してしまう。「自分は絶対に自殺などしない」と宣言してからの自殺。ここまでくると、明らかに事故や殺人を連想せずにはいられない。銀行の屋上には、簀の子が敷かれている。

とっさに想像したのは、シーソーのように屋上から飛び出してしまうのでは?ということだ。まぁ、この推理は当たらずとも遠からずというところだ。3人目の人物が自殺し、屋上の呪いが現実味を帯びてきた時、屋上に上がっても無事な人物が登場してくる。この違いもまたポイントのひとつだ。

満を持して御手洗が登場し、さもすべてわかったかのような言葉を繰り返す。探偵小説の定番として、御手洗はただ自分の推理を確認するためだけに現場におもむく。本作に御手洗や石岡が登場する意味はあまりない。

ただ御手洗潔シリーズが好きな人は読むというだけだ。特殊な事件ではあるが、あっと驚くようなトリックがあるわけではない。アクロバティックな展開あり、グリコの看板を事件のカギにするあたり、現実味のないオチのように感じてしまった。

御手洗潔シリーズというだけで読んだ感じだ。



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