2016.11.29 暴走する若手将校たちの狂気 【日本のいちばん長い日】
■ヒトコト感想
太平洋戦争末期の日本を描く。豪華キャストで緊迫した日々を描く。強烈なのはポツダム宣言を受諾すると決定した日だ。陸軍の若手幹部が一億玉砕を唱え反乱をもくろむ。それを止めようとする上層部たち。天皇の玉音放送のテープを奪い取ろうとするなど、鬼気迫る迫力がある。終戦直前であるため、物資が不足しどれだけ急ぐ場合であっても、自転車を一生懸命こぐしかない。
青年将校たちのクーデターがもし成功していたらと考えると鳥肌が立つ。そして、当然のごとく戦争に負けた責任をとり、阿南陸軍大臣は切腹をする。異常な時代の異常な一日は、まるで熱病にでも犯されたように人々をおかしくする。作中では当たり前に描かれているが、かなり異常な世界だ。
■ストーリー
太平洋戦争末期、戦況が困難を極める1945年7月。連合国は日本にポツダム宣言受諾を要求。 降伏か、本土決戦か―――。連日連夜、閣議が開かれるが議論は紛糾、結論は出ない。
そうするうちに広島、長崎には原爆が投下され、事態はますます悪化する。
“一億玉砕論"が渦巻く中、決断に苦悩する阿南惟幾(あなみ これちか)陸軍大臣(役所広司)、国民を案ずる天皇陛下(本木雅弘)、聖断を拝し閣議を動かしてゆく鈴木貫太郎首相(山﨑努)、
首相を献身的に支え続ける迫水久常書記官(堤真一)。一方、終戦に反対する畑中健二少佐(松坂桃李)ら青年将校たちはクーデターを計画、日本の降伏と国民に伝える玉音放送を中止すべく、皇居やラジオ局への占領へと動き始める・・・。
■感想
物資もなく追いつめられた日本。ポツダム宣言を受諾するか本土決戦か。ジリ貧の状況であっても陸軍内部ではまだ逆転の可能性を捨てていない。軍の幹部たちが喧々諤々の言い争いをする中で、鈴木首相だけは先を見据えている。
この状況の日本では、天皇がどれだけ全面降伏に言及したとしても、軍の幹部たちは諦めきれない。ポツダム宣言の内容のひとつの文言、特に天皇の扱いに対して神経質になり、ちょっとした意味の取り違えで、その後の流れが大きく変わる。もはや異常な状態であることは間違いない。
阿南陸軍大臣が陸軍内の青年将校たちを抑えようとする。血気盛んな若者たちは、本土決戦により逆転を目指す。武器や物資がないとわかっていても、根性論でなんとかしようとする。なぜそこまで?なぜ天皇の扱いに対するちょっとした言い回しが気に入らないのか。
異常な空気感につつまれており、死ぬことをなんとも思わない者たちばかりだ。クーデターを起こした畑中少佐にしても、まだ戦えるという強い思いから、上官を殺害してでも本土決戦を目指そうとする。異常すぎる状況だ。
死ぬことが美徳のように感じる世界。阿南は当たり前のように自害する。そして畑中少佐はクーデター失敗により自害する。日本が戦争に負けたことを受け入れることができないということなのか。それとも陸軍大臣の責任ゆえか。
阿南は鈴木から任命された時、このような結末になることを想定していたのではないだろうか。登場人物それぞれに確固たるポリシーがあり、それぞれに魅力がある。狂気に突っ走る畑中であっても、国を想っての行動だ。ただ、異常であることは間違いない。
強烈なインパクトがある作品だ。
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