ナオミとカナコ 奥田英朗


 2015.4.16      練りこまれた展開とスリリングな流れ 【ナオミとカナコ】

                     
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■ヒトコト感想

女性ふたりが完全犯罪をもくろむ作品。練り込まれた伏線の数々と、スリリングな展開。前半はナオミ目線、後半はカナコ目線で描かれる本作。ナオミ目線では、カナコが夫からDV被害を受け、逃れるためにカナコの夫を殺害する計画を立てる。偶然の要素があるとはいえ、カナコたちの計画がすべてうまくいくかというドキドキがすさまじい。

実際に計画を実行する場面では、ページをめくる手を止めることができない。そして、カナコ目線の物語では、事件後、どのようにして逃げ切るかがスリリングに描かれている。怪しむ勤務先の面々。夫の家族たちは、独自に調査を始める。絶体絶命な状況下でありながら、逃れるふたり。もう終わりだと思わせておきながら、ギリギリで抜け出す。この緊張感がたまらない良作だ

■ストーリー

ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の“共犯者”になる。望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美。夫の酷い暴力に耐える専業主婦の加奈子。三十歳を目前にして、受け入れがたい現実に追いつめられた二人が下した究極の選択…。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」復讐か、サバイバルか、自己実現か―。前代未聞の殺人劇が、今、動き始める。

■感想
すばらしくスリリングでドキドキが止まらない。まさにページをめくる手を止めることができない作品だ。20代後半のナオミとカナコが主人公の本作。デパートの外商部に勤務するナオミが、中国人の経営者に高価な時計を万引きされることから物語はスタートする。

決して謝らない中国人女性との駆け引き。ナオミは無事時計を取り戻すことができるのか。何か難癖をつけられて、時計を取り戻すことができないのでは?という気分で読みすすめることになる。その後、親友のカナコが夫から激しいDVを受けていることを知ると、ナオミは完全犯罪の計画を立てることになる。

ナオミが考える完全犯罪の計画はかなり穴がある。が、ポイントを押さえているため、非常に効果的な計画に思えてくる。そして、あちこちに隠されている数々の伏線。それらがすべて効果的に活用され、完全犯罪の計画の手助けとなる。

絶体絶命のピンチに陥ったとしても、そこで窮地を脱する伏線が登場する。完全犯罪を実行する場面では、どこかに落とし穴があるのでは?と完全に感情移入して読んでしまった。自分がナオミになったつもりで、予定外のアクシデントはないか?とドキドキしながら読みすすめた。

完全犯罪をやりきったふたり。ここからが本作の一番の魅力だろう。完璧と思われた計画に、ほんの少しの穴と予定外の人物により、計画がくるってくる。カナコが、夫が失踪した可愛そうな妻を演じている段階で、ドキドキが止まらない。

ふたりの思惑通りに事が進みそうになると、邪魔がはいる。この絶妙なバランスがすばらしい。すべてがうまくいくのではなく、失敗する直前で踏みとどまる。このギリギリの展開が読者を引き付けて離さない。最後の最後まで油断できず、一気読みしてしまう引きの強さがある。

久しぶりに一晩で読み終わってしまう作品に出会った。



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