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 2015.6.23      夏の暑さとねっとりした感情 【マイ・バック・ページ】

                     


■ヒトコト感想

学生運動の過激さに惹かれるエセ思想家と、理想に燃える週刊誌記者の物語。週刊誌記者の沢田が、思想を語る梅山に騙されるという物語。学生運動にある種の憧れのようなものを持つ男・梅山。現代では学生運動という行為自体に不思議さがある。当時としては、学生運動にのめり込むのがかっこよかったのだろうか。

憧れから大した思想がなくとも周りを巻き込んだあげく、抜き差しならない段階まできてしまった梅山という男の物語だ。沢田は梅山の、過激でありながらどこか魅力的な話し方に惹かれてくる。梅山ならば何かとんでもないことをするかも?という謎めいた魅力はある。が、梅山の行為と、最終的には自己保身の数々に失望する沢田というのがラストの流れだ。

■ストーリー

1969年。理想に燃えながら新聞社で週刊誌編集記者として働く沢田(妻夫木 聡)。彼は激動する“今”と葛藤しながら、日々活動家たちを追いかけていた。それから2年、取材を続ける沢田は、先輩記者・中平とともに梅山(松山ケンイチ)と名乗る男からの接触を受ける・・・・・・。

「銃を奪取し武器を揃えて、われわれは4月に行動を起こす」沢田は、その男に疑念を抱きながらも、不思議な親近感を覚え、魅かれていく。そして、事件は起きた。「駐屯地で自衛官殺害」のニュースが沢田のもとに届くのだった――。

■感想
学生運動は理解できない。なぜそこまで学生が思想にこだわるのか。時代の流れにのせられた感がある。そんな、少し異常な時代が描かれている。古臭い週刊誌記者の事務所。すべてが昭和の時代を感じさせ、さらには、時代の雰囲気が学生運動を、より意義のあるもののように見せている。

夏の暑い盛りに、扇風機が一台しかない部屋で、ひたすら革命を起こすために内職をする。べとつく熱さが、学生たちのねっとりとした感情のようで、陰鬱な気持ちになる。

沢田と梅山の関係は不思議だ。沢田はスクープを手に入れたいと思い梅山に近づいたが、次第に梅山に惹かれていく。梅山は沢田を利用できるだけ利用しようとする。観衆は梅山が本物か偽物かわからない。沢田の上司が気にするように、梅山が口だけの偽物のように思える場面もある。

それら観衆の思いから反発するように、梅山たちは凶行にでる。ここで、ただのお遊び学生運動ではすまされなくなる。沢田がジャーナリストのプライドをかけて梅山を守ろうとする場面はドキドキしてくる。

本作が実話をベースにして描かれたということに驚きを隠せない。強烈なインパクトがあるのは、やはり学生運動の過激さかもしれない。自分たちの時代では考えられないような思想を持つ学生たち。なぜ、自分の人生を犠牲にしてまでも思想にのめりこむのか。

高い知識を持つからなのか、それとも下火となった学生運動にあこがれを持ち、ポーズとして革命を目指すのか。昭和の時代の暗部というか、現代ではまったく理解できない世界が描かれていることは間違いない。

今の若者が本作を見て、学生運動を理解できるだろうか。



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