2015.6.3 妖怪と女の子の漫才風やりとり 【モモへの手紙】
■ヒトコト感想
モモという小学六年生の女の子が主人公の本作。父親と喧嘩別れした直後に、父親が事故にあい他界。父親の机の上には「ももへ」と書きかけの手紙がある。父親を亡くした小学生の後悔と悲しみの物語かと思いきや、序盤から大きく違っていることに気づく。母親の田舎へ移り住んだモモ。そこで古民家に住み着く妖怪の姿が見えてしまう。
モモと妖怪たちの漫才のようなやりとりが面白い。妖怪であり、人には姿が見えないはずが、モモだけにはその姿が見える。そのため、妖怪たちが悪さをすることが気になってしまう。妖怪の風貌はそれらしいのだが、中身は中年おっさんのような思考だ。小学生女子と中年オヤジのやりとりを見ているようで面白い。妖怪メインの作品だ。
■ストーリー
“ももへ"とだけ書かれた手紙を遺し、お父さんは天国に旅立ってしまった。「ほんとうはなんて書きたかったの?」心ない言葉をぶつけ、仲直りしないまま、母いく子と瀬戸内の島に移り住む。慣れない生活に戸惑うももだったが、不思議な妖怪“見守り組"のイワ、カワ、マメと出会う。
■感想
父親と最後に会話したのが、喧嘩というのは辛い。そのことがトラウマになるのもよくわかる。もしかしたら、自分が父親にひどいことを言ったから、そのことが気になり父親は事故にあったのだろうか…。トラウマを抱えたまま、父親が手紙で書きたかったことを気にするモモ。
母親の田舎へ移り住むことになり、そこで地元の子供たちとの交流がある。田舎暮らしの描写が秀逸だ。なんとなくだが、自分の地元に近いような気もするので、そのあたりで親近感がわくのかもしれない。
モモが移り住んだ古民家には妖怪が住み着いていた。なぜかその妖怪の姿を見ることができるモモ。妖怪たちとモモのやりとりが良い。モモに弱みを握られた妖怪たちは、モモを恐れるようになるのだが、それでもモモに隠れて食べ物を盗んだり、人の物を取ったりと様々ないたずらをする。
妖怪の姿を見ることができるモモだけが、必死に妖怪たちを大人しくさせようとする。妖怪たちは、恐ろしい姿をしてはいるが、中身はただのおっさんだ。オジサンが悪態をつきながら、野菜や肉を食べる。中年オジサンの哀愁すら漂っているような気がした。
モモが母親と喧嘩をし、そこから母親がぜんそくの発作を発症する。父親のトラウマを思い出すモモ。母親を助けるために奮闘するモモを助けるのは妖怪たちだ。そもそもモモと母親が喧嘩した原因は妖怪たちにあるのだが…。
ラストは妖怪たちの手により、モモと死んだ父親との手紙のやりとりが描かれている。最終的に描きたかったことはこれなのだろう。それまでに、モモと妖怪たちの漫才をひたすら見せていたのも、最後の感動を倍増させるために、あえてヘンテコな日常を描いていたのだろう。
モモのトラウマはものすごくよくわかる。
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