2015.6.27 ジャーナリズムとは何か 【虚像の砦】
■ヒトコト感想
明らかにTBSの一連の事件をイメージした作品だ。メディアの存在意義と、ジャーナリズムとは何なのかを描いた作品。元ネタとなる事件は非常に印象深く、当時の思いとしてはまさに作中で語られるように「自己責任」という思いは強くあった。本作ではそれらの世論は政府が作り上げた都合の良いスケープゴートとして描かれている。
必ずしも正しいとは思わないが、読んでいてわくわくドキドキしてくる。さらには、主人公の風見がジャーナリストとして強烈な個性を持ち、上層部に対してジャーナリズムとは何かを問いかける。どことなく、半沢直樹的なイメージもあり、自分の信念を貫くキャラクターというのは、読んでいて心が熱くなってくる。
■ストーリー
中東で日本人が誘拐された。その情報をいち早く得た、民放PTBディレクター・風見は、他局に先んじて放送しようと動き出すが、予想外の抵抗を受ける。一方、バラエティ番組の敏腕プロデューサー・黒岩は、次第に視聴率に縛られ、自分を見失っていった。二人の苦悩と葛藤を通して、巨大メディアの内実を暴く。
■感想
中東で日本人が誘拐された。自衛隊派遣とからめた誘拐事件。誘拐された人物にアカの雰囲気があると知れ渡ると、とたんに自作自演や自己責任という言葉が噴出する。ジャーナリストである風見が主人公の本作。メディアとは何なのか。
報道とは何なのかが問われている作品だ。印象的なのは、報道番組と言えども、放送前には何重ものチェックが入り、たとえスクープを握っていたとしても、他局が一報をうつまではテロップすら出すのを尻込みするということだ。責任をとりたくない、事なかれ主義が横行しているということだろう。
TBSをイメージした作品のため、TBS関連の事件をイメージさせるような物語となっている。特にオウム真理教関連のニュースでTBSの報道により弁護士家族が殺害されるという事件を重要な要素として描いている。
国から免許を貰って放送事業を行うテレビ局。免許なんてのは形だけと思われがちだが、局側としては5年に一度の更新時期には、何もないことを願う。過去に不祥事があれば、政府ににらまれないよう、事なかれ主義になるのはよくわかる。そして、現場のジャーナリストたちが激しく反発するのもよくわかる。
主人公である風見がすこぶるかっこよい。ジャーナリストとして一本芯が通っており、上司や政府に楯ついてまで真実を伝えようとする。中東誘拐事件をリアルタイムで見た時には、まさに本作で描かれているように、自作自演と疑っていた。それが、実は仕組まれた可能性が高いということだ。
今の時代、各種圧力から逃れて真実をそのまま放送つるには、とてつもないパワーが必要なのだろう。政府に批判的な局はそれだけで、なにかと目をつけられてしまう。表現の自由がどれだけ守られているのかと考えさせられる作品だ。
風見のジャーナリズムに対する思いには、心打たれてしまう。
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