2018.1.22 貧乏アパートの住人たちの冒険物語 【満月の泥枕】
満月の泥枕 [ 道尾秀介 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
貧乏アパートで暮らす者たちの物語。訳ありな者たちの中で、二美男は公園の池に沈む死体を探すことになる。娘を自分の不注意から亡くした二美男は、離婚し自暴自棄となっていた。ミステリアスな展開であることは間違いない。池に放置されている死体を取り出すために、二美男たちは結託しある計画を立てる。その結果、とんでもないものを引き上げてしまう。そして、不可解な事件に巻き込まれることになる…。
娘を失った二美男と母親に捨てられた汐子の関係が良い。お互いがお互いを必要とし、憎まれ口をたたきながらも、良好な関係を築く。貧乏アパートの住人たちの心温まる交流が、なんだか気持ちがほっこりとしてくる。
■ストーリー
娘を失った二美男と母親に捨てられた汐子は、貧乏アパートでその日暮らしの生活を送る。このアパートの住人は、訳アリ人間ばかりだ。二美男はある人物から、公園の池に沈む死体を探してほしいと頼まれる。大金に目がくらみ無謀な企てを実行するが、実際、池からとんでもないものが見つかった!
その結果、二美男たちは、不可解な事件に巻き込まれていくことになる……。
■感想
二美男は家賃を滞納するようなぐうたら男。一緒に生活するのは、姪にあたる汐子。汐子はかなりのしっかり者で二美男のダメ具合を補完している。貧乏アパートで生活する二美男とその他の住人たちとの交流は良い。非常にホノボノとしている。
ある日、汐子の同級生に奇妙な依頼をされる。貧乏アパートの住人たちと協力し、祭りの日に荒唐無稽な計画を実行しようとする。ちょっとした冒険物語的な要素がある。ダメ人間たちが協力してひとつの計画を実行する。ちょっとしたワクワク感がある。
汐子の同級生であるタケルによりある計画を実行するのだが…。意味がわからずに襲われたりもする。謎の集団から追われることと、タケルの実家が剣道の道場ということがポイントだろう。序盤の重い雰囲気が中盤以降からちょっとした冒険物語となり、軽い感じになっている。
タケルの叔父が行方不明ということで、公園の池に死体となっているかと思いきや…。実はひとつのパターンを想定させておきながら、新たな真実が判明する。この流れの大きな変化というのが強烈なインパクトがある。
ひとつの冒険物語と共に、二美男と汐子の関係が語られている。汐子を捨てた母親が、汐子を取り戻すため二美男の元にやってくる。二美男は汐子を手放したくないために…。なんだか二美男がダメ男なだけに、汐子のしっかりぶりが際立ち、ふたりの関係性の良さがよくでている。
汐子の母親が登場したことにより、二美男の中での汐子に対する考え方がはっきりとしてくる。貧乏アパートの住人たちの中で二美男と親密な関係になりそうな女性もいるが、そのあたりのロマンスがないのは、汐子の存在があるからだろう。
ちょっとした冒険物語だ。
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