豆の上で眠る 湊かなえ


 2015.1.17      誘拐事件後の姉は別人? 【豆の上で眠る】

                     

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■ヒトコト感想

13年前に起こった姉の失踪事件。過去と現在が交互に語られる本作。過去のパートで姉が誘拐されることをにおわせる段階から、現在のパートでは姉が普通に存在している。ここに何らかの仕掛けがあるのか。読んでいくうちに、姉の誘拐は何事もなく解決するのでは?と思えてくる。ただ、大学生となった際の姉とのぎくしゃくした関係が、何か意味深に思えてしまう。

姉が誘拐され、母親が異常なまでの執念で姉を探し続ける描写が強烈だ。異常者に監禁されているのではと疑い、他人の家に入り込もうとする。過去の異常な状況から、現在の平穏な日常に至るまでに何があったのか。ミステリアスな仕掛けがあり、最後まで気が緩められない作品だ。

■ストーリー

行方不明になった姉。真偽の境界線から、逃れられない妹――。あなたの「価値観」を激しく揺さぶる、究極の謎。私だけが、間違っているの? 13年前に起こった姉の失踪事件。大学生になった今でも、妹の心には「違和感」が残り続けていた。押さえつけても亀裂から溢れ出てくる記憶。

■感想
姉の誘拐事件が発生し、困惑から現在に至るまでの違和感が語られている。冒頭から誘拐失踪事件の発生をにおわしつつも、大学生となった姉が普通に存在する日常が描かれている。読者としては、誘拐事件は無事解決したのだと想像してしまう。ただ、そこに微かなわだかまりを感じずにはいられない。

誘拐事件の描写がすさまじい。特に母親の混乱と執着には圧倒されてしまう。異常者に監禁されていると思い込み、あらゆる人たちを疑い続け、ついには近所から白い目で見られることになる。この痛いほどのリアルさが恐ろしくなる。

本作で最もインパクトがあるのは、失踪から数年後に発見された姉が、他人ではないか?と疑うくだりだ。両親だけが不自然に娘を信じ、自分や祖母を含めた者たちは、姉が別人だと疑ってしまう。ついにはDNA鑑定まで持ち出す始末。

見た目が衰弱していることと、数年経ったという変化よりも、心の違いを敏感に感じとる者たち。一瞬の仕草の違和感や好き嫌いの違いから姉を疑い続ける。ただ、その後、DNA鑑定でしっかりと親子の判定がされたことで、ひとつの解決となるのだが…。

ミステリアスな展開は、最後に大きな仕掛けが待っている。姉が偽物ではないかと疑い続け、大学生になったとしてもその疑いは晴れることはない。科学的に立証されたとしても、どこか腑に落ちないことがある。そして…。最後の最後まで気が抜けない作品だ。

過去と現在を交互に描く構成により、過去の事件の真実が明らかとなり、それが現在へどのように影響していくのかが気になってしまう。オチは衝撃的だが、かなり強引なことは間違いない。ごく普通の感性では考えられないようなオチだ。

最後までミステリアスな展開を引っ張る作品だ。



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