マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙


 2015.1.31      力強い演説と強烈な個性 【マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙】

                     


■ヒトコト感想

マーガレット・サッチャーのイメージはイギリスの首相というイメージしかない。鉄の女というのも聞いたことがある。本作ではサッチャーの政治家としての半生を振り返る形で描かれている。幻想の中に登場する夫デニスに惑わされ、衰えきった現在の風貌は、過去のサッチャーの強烈なイメージを強調している。

サッチャーという人物が、最初から女でありながら家庭をもつことに否定的で、滅私奉公の気持ちを強くもっていたことがわかる。さらには、フォークランド紛争を境に支持率が上がったかと思えば、あっという間に批判の的とされたりもする。波乱万丈の政治家人生だが、力強い演説と、その強烈な個性に思わず惹きつけられてしまう。

■ストーリー

マーガレット・サッチャー、86歳。最愛の夫亡き今振り返る、政治家としての栄光と挫折、そのために犠牲にしたかもしれない愛を。夫は他界、子供たちは独立し、ひとり静かに晩年を送るマーガレット・サッチャー。夫の遺品を整理する決心がつかないマーガレットは、8年目にして、ついにある決意をした。だが、夫デニスは、今もまだマーガレットの幻想の中に存在する。

時には朝食の食卓に現れたり、子供たちの昔のビデオを一緒に見たり、彼はいつだってそばにいるのだ。自叙伝に旧姓でサインをしてしまったマーガレットは、ふと過去を振り返る。夫と出会う前、夫との出会い、結婚生活、そして、“鉄の女"の名で知られた政治家としての人生を―。

■感想
サッチャーのイメージは鉄の女と言われるくらいだから、強さをイメージしていた。女が政治家になることが一般的ではない時代に、ひとりやっきになり国を良くしようとする。周りからの反発が強ければ強いほど、サッチャーが自身を鉄の鎧で包み込むように思われた。

保守党の党首選に出馬し、あっという間にイギリスの首相となってしまう。初の女性首相としての強烈なプレッシャーと国民からの期待。すべてを背負い込むサッチャーの心身の負担というのはとんでもないものなのだろう。

圧巻なのは、フォークランド紛争での決断だ。結果オーライということで評価されてはいるが、イギリスとアルゼンチンの間で泥沼の戦争が続いていたかもしれない。フォークランド紛争での勝利から、一気に国民の支持を集めるサッチャー。

アメリカなどの他国から説得されたとしても、頑として受け入れないサッチャーの心の強さに圧倒されてしまう。サッチャーの表情といい、話し方といい、押しの強さはまさに独裁者を連想せざるお得ない。当時は、サッチャーの独裁政治状態だったのだろう。

全盛期のサッチャーが強烈であればあるほど、没落したサッチャーの姿というのは見ていて悲しくなる。亡き夫の幻想に悩まされ、過去を思い出し、現実へと帰る。どれほど偉大な政治家でも老いればただの人でしかない。

悲しい現実であり、客観的に見ると平穏な暮らしのように見えて少し安心してしまう。元首相だからといって、常に周りからちやほやされているわけではない。権力がなくなれば、周りから人がどんどん離れていくは宿命だ。

サッチャーを演じたメリル・ストリープはすばらしすぎる。



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