LOFT


 2016.9.14      ミイラを固定カメラで映し続ける 【LOFT】

                     


■ヒトコト感想
雰囲気の恐ろしさが強烈なジャパニーズホラーだ。印象的なのは、作中の音量の差だ。人が話をする声は小さく、相対的に効果音が大きい。作家の礼子が引っ越した先は、静かだがジメジメとしており、薄暗くどこか陰鬱な雰囲気のある家だ。沼地から引き揚げられた千年前のミイラが恐ろしい。特に、ミイラにシートをかけてひたすらカメラで写し続ける場面は、前半の怖さのピークかもしれない。

そこから、数々の死体と妄想が繰り広げられる。吉岡がどこか病んでいるようであり、ハッピーエンドとならないのは想像できた。霧深い沼地というだけで恐ろしい。何かが出るぞ出るぞと思わせておいて、最後にしっかりと登場させる。ある意味期待どおりの流れだ。

■ストーリー

スランプに陥り、執筆に専念するため担当編集者が用意した東京郊外の空家に引っ越して来た作家・春名礼子。森と沼と草原に囲まれて、ひっそりとたたずむその洋館の向かいには、大学の研修所だという不気味な建物があった。ある日、そこに出入りする男を見かけた礼子は、廃墟のようなその建物の中に魅入られたように近づいて行く。

■感想
最初は編集者と礼子の物語かと思った。が、吉岡が登場しミイラを観察する部分から恐怖は倍増してくる。まず礼子の引っ越し先が恐ろしすぎる。全体的に薄暗く山の中でじめっとした雰囲気だ。静かなのは確かだが、日当たりも悪そうで、部屋の中も無機質だ。隣の研究所にいたっては廃墟にしか見えない。

そんな状況でシートにくるまれたミイラを出し入れしていれば、否が応でも気になる。ミイラをひたすら観察する場面が強烈に恐ろしい。早回しした映像のど真ん中にはシートに包まれた怪しげな物体がある。何かが起きるのでは?と思わずにはいられない。

ミイラを近くに置くと、そこから妄想か現実かわからない場面が続く。登場人物たちがどこか異常な雰囲気をかもしだしている。特に編集者は登場時から何かがおかしいと思っていたが、案の定…。礼子と吉岡の関係は普通のように思えるが、それでも合間にはサブリミナル的に心霊現象が発生する。

死体ばかりがあちこちに登場し、何が心霊現象で、何が吉岡の妄想なのかわからなくなる。ミイラを含めた女性の幽霊たちの表情はさすがに恐ろしい。ただ、現物がそのまま動き出すと、途端に恐怖が半減してしまう。

ラストは吉岡がすべては妄想なのかどうなのかを確かめて終わる。沼の中に死体があるのかないのか。よかった、やっぱり気のせいだった。という終わりにはならないとわかっていた。ある意味期待どおりの結末かもしれない。豪華な俳優陣だが、それがこの手のホラー映画に登場してくるとかなり違和感がある。

本作の監督の作品では、昔は名作が多く特に「CURE」はかなり恐ろしかった。流れ的には似通っているのだが、特別な恐怖を感じることはなかった。

「CURE」の恐ろしさを超えることは難しいのだろう。




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