2015.8.24 両親が離婚した子供の苦悩 【キャロリング】
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■ヒトコト感想
親が離婚の危機に直面したとき、子供はどうするのか。学童保育の大和と、両親が離婚の危機にある航平の物語だ。子供服メーカーが副業として学童保育を行う。本作を読むと、あらためて子供相手の仕事は大変だと思えてくる。離婚してほしくない子供の立場も良くわかるし、離婚へまっしぐらの両親の思いもわかる。
キャリアウーマンと仕事ができない亭主というコンビは厳しい。作者の辛辣な言葉が、登場人物たちの心情として語られる。どちらかというと、キャリアウーマン側の視点に立っているのだろう。抜き差しならない状況になり、離婚を避けられない夫婦の子供がどのように苦しんでいくのか。一番かわいそうなのは間違いなく子供だ。
■ストーリー
大和俊介が務める小規模 子供服メーカー「エンジェル・メーカー」は経営不振のため、12月25日で「クリスマス倒産」することとなった。エンジェル・メーカーは学童保育もしており、ほとんどの子供は別の所へと移っていったが、ただ1人田所航平だけは最後の日まで世話になることになっていた。
航平の両親は別居しており、航平はキャリアウーマンである母親の圭子と共に年明けには海外に行くことが決まっていたのだ。両親に離婚して欲しくない航平は何とかして両親を仲直りさせるべく、大和の同僚の折原柊子と共に父親の祐二の居る横浜へと向かう。
■感想
キャリアウーマンの女性と、仕事のできない旦那。海外転勤が決まり…。どうしても男のプライドだとか、女は子供と一緒にいるべきだという考えはベースにある。一般的な考えを踏襲すると本作のように離婚しか道はないのだろう。
学童保育の職員である大和が、すべてを理解しながらも、辛辣な言葉を旦那につきつける。やはり作者は女性ということもあり、キャリアウーマンの女性を応援する立場にあるように感じられる。自立する女と、家にいてほしい男。この二つを同時に満たすのは難しい。
両親が別居することで何より辛いのは子供だ。学童保育でそっけない態度をとる航平に手を焼く大和。父親の居場所を知ると、会いに行こうとする航平。大和目線での物語としては、夫婦の話に首を突っ込むつもりはないが、思わず口を出してしまう感じだ。
このあたり、他人に対しておせっかいをやくのだが、その内容がかなり強烈だ。作者の描くキャラクターは、頭の中で思いを語るのだが、それがものすごく正論であり、正しいが堅苦しい。そして、正しくできないことに苦悩している。
子供がいかに両親の復縁を希望しようとも、そううまくはいかない。様々な問題や障害があり、ラスト間近には航平が身代金目的で誘拐されたりもする。大和の恋愛や、ヤクザ側の悲しい理由など、ひとつの出来事に対して、そうせずにはいられないどうしようもない理由が語られている。
本作に登場するキャラクターに真の悪人はいない。皆、他人のためを考え行動している。すべての人が幸せになる答えなどない。一番割を食うのは、間違いなく弱い立場の子供だろう。
共働き夫婦の離婚へ至るプロセスを読まされている感じだ。
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