クリスティーン 上 スティーヴン・キング


 2016.10.12      呪われた車にとりつかれた男 【クリスティーン 上】

                     

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■ヒトコト感想
いじめられっ子のアーニーがオンボロ車に運命を感じ、ぞっこんとなる。この58年型プリマスをめぐり様々な事件が勃発する。アーニーと親友のデニス。そして、アーニーのガールフレンドである美しいリー。アーニーが車にクリスティーンという名を付け始めてから、その傾倒ぶりに拍車がかかる。すべて自分で修理し、まるで恋人のように愛着を覚えるアーニー。

過去の持ち主の親類から警告があったように、この車になんらかの秘密があるのは間違いない。クリスティーンにとりつかれたような状態のアーニー。すべてが不幸へとすすんでいるようだが、良い面もある。いじめられっ子がクリスティーンを守るためにチンピラに対して立ち向かうという部分だ。

■ストーリー
〈負け犬〉のアーニーは17歳、唯一他人より優れているのは車の整備だけだった。そのアーニーが路傍にセールの札をつけて置いてあったオンボロ車に一目惚れしてしまった。両親の大反対を押し切り、バイトで稼いだ金を注ぎこんで、アーニーはこの車を手に入れた。赤と白に塗り分けた’58年型プリマス・フューリー。名はクリスティーン、だがクリスティーンはただの車ではなかった。

■感想
上巻ではアーニーとクリスティーンの出会い、そして傾倒ぶりが描かれている。客観的な視点として親友のデニス目線のパートがある。クリスティーンのためだったら、どんなことでもやり遂げてしまいそうなアーニー。

車のフロントガラスのヒビが前よりも小さくなっているくだりは非常に恐ろしい。デニスが薄々感じる恐怖というのは、そのまま読者にも伝わってくる。工場を間借りし、そこで来る日も来る日もクリスティーンを修理し続けるアーニー。仕舞には両親との関係も怪しくなってくる。

いじめられっ子のアーニーが、クリスティーンを手に入れたことで良い方向へと変わったことがひとつだけある。それは、いじめっ子たちに対して自分の意志を主張し立ち向かっていったということだ。

チンピラに対して喧嘩で打ち負かしたりと、およそいじめられっ子らしくない行動をとる。これがクリスティーンの呪いのせいなのかそれとも…。クリスティーンに熱を上げるあまり、リーやデニスとの関係すら危うくなってくる。クリスティーンの秘密はまだ上巻では明かされることはない。

衝撃的なのは、チンピラ恨みを買ったため、クリスティーンをボロボロにされる部分だ。その後、チンピラグループのひとりがクリスティーンに轢き殺されることになる。ここでは明確な描写はない。ただ、クリスティーンに追いかけられる恐怖の描写が続いている。

クリスティーンとはいったい何なのか。アーニーはどうなってしまうのか。クリスティーがおかしなことに気づき始めた刑事やデニスたちは、どのような行動をとるのか。下巻に向けて気になる要素がてんこ盛りとなっている。

呪われた車にとりつかれた男を濃密に描いている。



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