クヒオ大佐


 2015.8.14      最高にバレバレな結婚詐欺 【クヒオ大佐】

                     


■ヒトコト感想

実在した結婚詐欺師を描いた作品。他人が見れば、明らかに怪しい風貌をしているクヒオ大佐に、女性たちは騙され続ける。つっこみどころ満載の面白映画だ。実在の詐欺師を描いているのだが、かなりデフォルメされているのだろう。鼻を整形し、へたくそな英語を使い、むちゃくちゃな経歴を披露する。いくらんでもエリザベス女王の身内やカメハメハ大王の親戚というのは、簡単に信じられることではない。

女性たちのクヒオ大佐に対する熱の入れようはかなり異常だ。その中で、悪の道に手を染めた者たちは、クヒオ大佐のインチキ具合を素早く見抜いてしまう。騙されたと知ったとしても、最後まで悪あがきをするクヒオ。主演の堺雅人の飄々とした表情が、詐欺師にうってつけかもしれない。

■ストーリー

ジョナサン・エリザベス・クヒオ大佐(堺雅人)は流暢な日本語で戦場での武勇伝を語り、次から次へと女性を騙す、稀代の結婚詐欺師である。その日のターゲットは、博物館のエリート学芸員浅岡春(25)(満島ひかり)。クヒオは、子供たちを引率する彼女に「あなた、子供嫌いでしょう」とだけ声をかけて去っていく。意味もなく言われて言葉を失う春。

その後クヒオは、彼を捜しにきた永野しのぶ(38) (松雪泰子)と宿泊先に戻る。彼女は、すでにクヒオに夢中。「入籍すれば、米軍から5千万円」「英国のダイアナ妃のドレスを手がけたデザイナーにウエディングドレスを発注する」といった言葉にうっとりし、社交界へのデビューに備え、英会話のレッスンにも励んでいる。

■感想
流暢な日本語で武勇伝を語る怪しげな男。常に軍服に身を包み、街を闊歩する。明らかに胡散臭い。付け鼻のような風貌で女性たちを騙す。明らかにおかしいのだが、恋は盲目なのか、女性たちはクヒオの怪しさに気付くことなく貢ぎつづける。

弁当屋の社長はクヒオの正体がわかったとしても、愛ゆえか一緒に死のうとする。博物館の学芸員はクヒオの怪しげな魅力のとりことなる。唯一キャバクラの女性だけは、同じ穴のムジナを見分けるのか、あっさりとクヒオのインチキを見抜きながらも、騙されたフリをする。

クヒオのインチキを見抜くのは、何かしら犯罪に関わった者たちばかりだ。弁当屋の社長の弟は、姉が騙されていると知ると、今度はクヒオを脅し始める。むちゃくちゃな状況だが、クヒオの往生際の悪い行動には、関心すらしてしまう。

自分の正体を見抜いた強い者に対しては、下を向きながら卑屈に”はい”とだけ返事をする。が、なんだかんだと言い訳を並べながら逃げ切ろうとする。実在のクヒオがどのような風貌かわからないが、外人として通用するような風貌ではなかったはずだ。本作でも、それを巧みな演出で描いているのが良い。

都合の良い言葉だけを並べ、女性たちから大金をせしめてきた男クヒオ。そのラストはかなりあっさりとしている。しかし、最後の最後まで往生際悪く、ひたすら自分はクヒオ大佐だと言い続けるのはすごい。作中ではあまりにバカバカしい詐欺事件を踏襲し、バカバカしいほどバレバレな詐欺事件として描かれている。

クヒオがどのような心境で詐欺を続けたかは、最後まで描かれておらず、ひたすら騙される女性と、気づいた女性から逃げるクヒオが描かれている。

本作が実在の人物をベースに描かれていることに驚いた。



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