2015.7.29 高校入試をぶっつぶす! 【高校入試】
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■ヒトコト感想
進学校の入試に何者かが「入試をぶっつぶす!」という貼り紙を張る。試験を監督する教師や、採点する教師、そして入試を受ける生徒などの視点により物語が描かれる。ネットの掲示板に入試の状況がリアルタイムに書き込まれ、教師の中に外部へ情報を漏らしている者がいるということになる。誰が何の目的で入試をつぶそうとしているのか。
入試の裏側が描かれており、採点をする者は人間なのでミスをする。そのことにより、人生をくるわされる者もいる。人生の大きな節目でもある高校入試。それぞれの思惑と、一度失敗すると取り返しがつかない状況といのは、数々のプレッシャーを生み出すのだろう。教師、生徒、そして生徒の親。今の高校入試の実状の恐ろしさを描いた作品だ。
■ストーリー
県内有数の進学校・橘第一高校の入試前日。新任教師・春山杏子は教室の黒板に「入試をぶっつぶす!」と書かれた貼り紙を見つける。そして迎えた入試当日。最終科目の英語の時間に、持ち込み禁止だったはずの携帯電話が教室に鳴り響く。
さらに、ネットの掲示板には教師しか知り得ない情報が次々と書き込まれ…。誰が何の目的で入試を邪魔しようとしているのか?振り回される学校側と、思惑を抱えた受験生たち。やがて、すべてを企てた衝撃の犯人が明らかになる―。
■感想
入試をぶっ潰す、というフレーズから想像するのは、入試がなくなるということだ。様々な教師の視点で物語は進んでいき、並行するようにネット上の掲示板に書かれた入試に関する暴露情報も描かれる。禁止されたはずの携帯が鳴りだし、答案用紙が一枚紛失し、果ては、同じ受験番号の英語の答案用紙が二つでてくる。
教師たちの人間関係や、生徒の親の問題など、様々な要素が絡んでくる本作。地元の優秀な子供たちが集まる進学校として特別視される一高。一高卒というブランドを手に入れるためにやっきになる人々たちの醜い姿も描かれている。
入試の採点を教師が行い、そこでミスが起きたらどうなるのか。教師のミスにより、ひとりの子供の人生が大きく変わる可能性がある。そのことを物語の核とし、開示請求することで、自分の答案を見ることができる。
普通は高校入試は受けるだけの立場で終わる。が、採点する立場や監督する立場での困難や、問題点なども指摘されている。誰が入試を邪魔しようとしているのか。想定できる犯人像はある。ただ、複数の関係者が複雑に絡みあうことで、誰が犯人かわからなくなる。
ラストの流れは多少納得できない部分もある。複数犯により高校入試の妨害。ネット上での指示だけで、それぞれが役割をまっとうする。それぞれが入試に何らかの波風を立てたいという動機はわかる。が、本作のように全てがスムーズに向かうとは思えない。
最後まで実行犯たちの目的がはっきりしないのは、動機が弱いことの裏返しかもしれない。物語のピークは、同じ受験番号の答案用紙が見つかり、片方が満点に近い点数をとっていると分かった時だろう。
高校入試、それだけをテーマに作品を作り上げるのはすばらしい。
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