キツツキと雨


 2015.5.30      撮影隊と木こりのコラボ 【キツツキと雨】

                     


■ヒトコト感想

映画撮影の現場の悲喜こもごもが描かれている。木こりの克彦は小さな山村で暮らす。そこに突然やってきたゾンビ映画の撮影部隊。戸惑いながらも協力する克彦。映画撮影の現場は、ADがこき使われるのは当然として、助監督がすべてを調整しあちこち動き回ることの大変さが描かれている。面白いのは、克彦がADのひとりと思っていたのが、実は監督であり、使えない若者あつかいする部分だ。

現場で一番えらいはずの監督が、一番気が弱くおろおろとしている。克彦との出会いにより監督が少しづつ変わっていく。自分の信念を貫くために、心を強くもち自分の主張を押し通そうとする。克彦と監督の関係がなんとも言えず良い。克彦がやけに撮影に協力的なのが、なんだかおもしろくなってくる。

■ストーリー

出会うはずのない二人が出会ったら・・・新しい今日が、森の中から始まった。木こりの克彦が暮らす長閑で小さな山村。そこへ突然やってきたゾンビ映画の撮影隊に、住人たちは戸惑い気味。ひょんなことから無理やり手伝わされる羽目になった克彦は、強引な撮影スタッフと“使えない若いスタッフ"に振り回されて爆発寸前。

一方、克彦のなかで“使えない若者"にされてしまった新人監督の幸一は、持ち前の気の弱さで現場をまとめきれずにパニック寸前。偶然出会った木こり60歳と新人監督25歳。初めは距離を置いていたふたりが、克彦は撮影を通して映画の面白さに気づき、幸一は克彦と接することで本来の自分らしさを取り戻していく。そしてふたりの交流は、いつしか村と撮影隊の奇妙なコラボレーションを生み出していく。

■感想
小さな山村に突然やってきた映画の撮影部隊。その映画がゾンビ映画であり、どうにもチープで面白くなさそうだ。最初は嫌々協力していた克彦が、いつのまにか映画撮影にのめり込み、自発的に撮影に協力し始めるのが面白い。

心境の変化というか、映画のシナリオを読み、面白いと感じて協力する。どう見ても面白くなさそうなゾンビ映画で、監督自身も嫌気がさしているような描写がある。それが克彦の変な熱意に感化され、いつの間にか監督自身もゾンビ映画を真剣に撮ろうとする。

ゾンビ映画が明らかに変だ。低予算映画の典型というか、明らかに不自然な設定と、村人たちを無理やり集めてエキストラとする流れ。最初は人が集まらず、ゾンビを迎え撃つ主婦軍団が三人しかいない状態など、映画作品としての問題は山積みだ。

監督は、そのあたりのあまりの低予算っぷりに苦悩する。それらを克彦のバイタリティあふれる行動で、いつのまにか村人たちが集結し、映画撮影に協力する。気が弱い監督までが、克彦に影響され監督として強気に発言をする。ただの木こりでしかない克彦のへんなバイタリティが周りに影響を及ぼす。

克彦と息子の関係も良い。克彦が絵に書いたような、昔ながらのおやじであり、ガンコオヤジなのがよい。新人監督と克彦の関係は、最初は覇気のない監督を叱咤激励し、どちらかというと克彦が強引に監督を引っ張るような感じだった。

それが、映画が佳境に入ると、克彦のことを慕いつつたくましく成長した監督がリーダーシップを発揮する。ヘンテコなB級映画であるゾンビ映画は、最後の最後までめちゃくちゃで、到底面白そうには見えない。それでも、変な感動があるのは、演じる俳優たちの演技力の賜物なのだろうか?、

覇気のない若者が新人監督とは思わなかった。てっきりスカした売れっ子主演俳優なのかと思った。



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