危険なビーナス  


 2017.4.21      多数の素材と謎とのリンクが弱い 【危険なビーナス】

                     
危険なビーナス [ 東野 圭吾 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
母親が再婚し、タネ違いの弟ができた伯朗。資産家の弟・明人が失踪し、その妻である楓と明人の失踪原因を探る。資産家の遺産争いやサヴァン症候群など、さまざまな要素があり、序盤から中盤まではどんな謎かについてもあいまいなまま物語はすすんでいく。後半になると楓の不自然さが際立ち、伯朗が楓に惹かれていくのがより物語を不自然なものにしている。

結局のところ物語の芯が何なのかわからないまま終わっている。明人の失踪原因も特別なものではなく、楓の正体も驚くようなものではない。人の脳に関する様々な謎や後天性のサヴァン症候群など興味深いテーマではあるが、謎とのリンクが弱いためミステリアスな雰囲気はない。全体的にテーマがはっきりしない、ぼんやりとした印象の作品だ。

■ストーリー
弟が失踪した。彼の妻・楓は、明るくしたたかで魅力的な女性だった。楓は夫の失踪の原因を探るため、資産家である弟の家族に近づく。兄である伯朗は楓に頼まれ協力するが、時が経てば経つほど、彼女に惹かれていく。

■感想
複雑な家庭で育った伯朗が大人になり成長し、資産家の父親が危篤となる。遺産をすべて引き継ぐはずの明人は行方不明となり、その妻である楓がアメリカからやってきた。まず楓の正体不明感がすさまじい。明るく朗らかで魅力的な女性。

伯朗が勤務する動物病院の助手からは、注意しろと警告される。弟の妻である楓に惹かれていく伯朗が、まるで中学生のような行動をとるのが面白い。メインである明人の失踪や、サヴァン症候群の話よりも、楓と伯朗のよくわからないおままごと的な流れの方が印象深い。

遺産を受け継ぐはずの明人が失踪したとなると、遺産相続の権利をもつ親戚連中に疑いの目が向けられることになる。明人の失踪原因を探るはずが、物語はあちこちに脱線している。伯朗の父親が後天性サヴァン症候群だったとか、伯朗の父親が書いた絵が特殊だとか。

謎と直接的に関係はないのだが、どうにも物語の芯が何なのかはっきりしない。楓が積極的に動くことが、明人の消息を探ることに繋がっていない。伯朗の調査についても明人を探すというよりも、自分の家族の謎について調べているような感じだ。

ラストでは明人がどうなっていたのかや、楓の正体が明かされる。そこにいたるまでの展開も特別ミステリアスではない。伯朗が楓に熱を上げ、弟の嫁ということで躊躇しながらも気持ちを抑えることができない。なんだかこの中途半端な展開がイライラを募らせる。

後天性サヴァン症候群の秘密が明らかとなると、人工的に天才を作ることができるというとんでもない発明となるところが…。すべてがめでたしめでたしで終わるのも、なんだか物足りない気がしてならない。

タイトルからすると楓の謎がメインなのだろうか…。



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