火点の城


 2015.4.20      城を作ることの難しさ 【火点の城】

                     


■ヒトコト感想

宮大工が主人公という一風変わった作品。信長から安土城の建築を命令された又右衛門。紆余曲折あり、又右衛門が設計建築することに決まったのだが…。戦国時代の城建築の困難さが描かれている。今のように機器が発達しているわけではない。木を切り出し、そこから柱を作り、すべてが手作りの世界。木だけで巨大な城を作ることの困難さと、最適な木を手に入れること自体の難しさもある。

国どうしの争いはもとより、仲間の死や、身内の病気など、又右衛門を悩ます種はつきない。そんな中での城建築でのラストの流れは、感動的だ。完成間近の城の中心の柱を、わずかに浮かせることで柱を短くしようとする。むちゃくちゃなことだが、最後までやりきる感動的なラストだ。

■ストーリー

甲斐の武田勢を破った織田信長は翌1576年、その天下統一事業を象徴するかのごとき巨城を、琵琶湖を臨む安土の地に建築することを決意。信長に見込まれた宮大工・岡部又右衛門が築城に挑む。 空前絶後の巨大建築の完成には、多くの困難が待ち受けていた…。

時には危険を顧みず敵地に乗り込み、理想の木材を探す又右衛門。一方、国元では新たな戦乱の暗雲が立ちこめ、又右衛門の帰還を待つ大工たちを苦難に巻き込み、さらに妻の田鶴にも病魔が迫っていた。やがて勃発する悲劇的な争い、仲間の死。又右衛門は目指す檜を得ることができるのか。信長の野心を現実のものにすることができるのだろうか……。

■感想
戦国時代に城を作ること。おぼろげながらに、昔の人が城を作ることがどれだけ大変かは理解していた。が、あらためて見ると、気の遠くなるような作業の連続ということがよくわかる。天下を統一すべき信長の城への注文は多種多様だ。その中でふき抜けという注文がある。

又右衛門は信長の命を背き、ふき抜けは死を招くと言う。模型を作り、実際に火を付け、ふき抜けのある城とない城とで火のまわり方が違うと目の前で実演してみせる。精巧につくられた城の模型が、あっという間に燃える様に圧倒されてしまう。

城を作るためには柱が必要だ。そして、柱となる木を探す必要がある。巨大な城を作るためには、中心となる巨大な檜が必要となる。又右衛門は巨大な檜を求めて織田に破られた甲斐の国へ向かう。そこでご神木を手に入れるためにひと悶着ある。

圧巻なのは、ご神木の大きさもそうだが、それを運搬する方法だ。川に筏を浮かべ、その上に巨大なご神木を横たえて運ぶ。ご神木の巨大さに比べると、それから作られた柱がやけに小さく見えたのは気のせいだろうか。すべて木で城を作り上げることの困難さが描かれている。

ラストでは完成間近の城に不具合が起こる。周りの柱が沈み込み、中心のご神木から作られた柱だけで天井を支えている状態となる。又右衛門は中心の柱を少しだけ切ることを決断する。すでに天井まで取り付けられた城の中心の柱を切ることなどできるのだろうか?

周りを少しだけ持ち上げ、中心の木を浮き上がらせて、その隙に柱を切る。かなりアクロバティックな方法だ。いわば、周りの人間たちが城を柱のかわりに支えているようなものだ。

城を作ることの困難さが、これでもかと描かれている作品だ。



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