紙の月


 2017.3.22      若い男に溺れ横領をくりかえす女 【紙の月】

                     
紙の月 DVD通常版 [ 宮沢りえ ]
評価:3.5

■ヒトコト感想
銀行勤務の女が若い男に溺れ、目の前にある客の金を横領してしまう物語だ。主人公である銀行員の梨花が、客の金に手を付けるシーンがあるのだが、次第にエスカレートしていく様が強烈だ。夫との関係がうまくいっていないことや、日ごろのストレスもあるのだろう。最初はレジで支払う手持ちの金がないから、集金した金を一時的に借りる程度だったことが…。

銀行とはこれほど簡単に客の金を横領することができるのだろうか?いずれバレること、という思いが梨花にあったとしても、あまりに一時の享楽に流れすぎている。ごく普通のまじめな女が、手堅い人生から転落していく。銀行の次長が事なかれ主義というのも妙なリアルさを感じてしまった。

■ストーリー
バブル崩壊直後の1994年。夫と二人暮らしの主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として外回りの仕事をしている。細やかな気配りや丁寧な仕事ぶりによって顧客からの信頼を得て、上司からの評価も高い。何不自由のない生活を送っているように見えた梨花だったが、自分への関心が薄い夫との間には、空虚感が漂いはじめていた。

そんなある日、梨花は年下の大学生、光太と出会う。光太と過ごすうちに、ふと顧客の預金に手をつけてしまう梨花。最初はたった1万円を借りただけだったが、その日から彼女の金銭感覚と日常が少しずつ歪み出し、暴走を始める。

■感想
客からの信頼を得ていた銀行員の梨花が、年下の大学生の男に溺れ、銀行の金を横領することになる。最初はたった1万円を借りることから始まる。そこから、大学生へ学費を貸すために客の定期200万を処理したフリをして自分の懐にいれてしまう。

この瞬間のドキドキ感はすさまじい。銀行の営業マンがうまく立ち回れば、客に対しては定期預金したと報告し、銀行に対しては客からキャンセルの連絡があったと言えば、自分の金にすることができる。いずれはバレるのだが、そこへ頭が働くわけもない。この考え方が事態を悪い方向へエスカレートさせているのだろう。

最初は大学の学費だけのはずが、いつの間にか大学生との贅沢な生活を楽しむようになる梨花。夫が堅実であり、単身赴任で中国へ行っているというのもある。梨花が大学生と享楽のかぎりを尽くす。ホテルのスィートルームへ宿泊し、ルームサービスを楽しみ、高額な時計や服を買う。

たとえ支払が高額になったとしても、ボケ始めた資産家を口車に乗せて金を奪い取れば良いと考える。作中ではボケ始めた老女が登場してくる。そこで梨花は相手がボケていると知り、金を盗み取るのだが…。老女がボケているのか、梨花の悪事を知りつつ受け入れているのかよくわからない描写がある。

横領がバレそうになると、次長の弱みをつき脅迫する。いつの間にか非常に強烈なキャラクターとなる梨花。幼いころ正義感にあふれ父親の財布から金を盗んでまで恵まれない人に寄付をした女の子は、大人になり、成長すると現実感のない享楽に溺れ、決して続かないとわかっていながら若い大学生に執着する。

横領の件がバレるのがわかっていながら、止めることができないどころか、新たな金を手に入れるため、自分で広告を作り架空の投資商品を売りつけようとする。すさまじい転落っぷりだ。

結局最後の最後まで、何か刹那的な雰囲気で悪事に手を染めながら生きている女だ。



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