2017.9.12 江戸時代のセーフハウス 【駆け込み女と駆け出し男】
評価:3
■ヒトコト感想
江戸時代に夫から手ひどい扱いを受けている女が逃げ込む先の寺があった。この駆け込み寺を中心とした物語なのだが、”駆け込み”の効力のすさまじさが強く印象に残っている。幕府公認の施設ということで、駆け込みさえすれば、誰も手を出すことができない。夫が乗り込んできたとしても、あっさりと追い返されてしまう。逃げ込んだ女だけの世界。
非常に厳しい世界ではあるが、それぞれ事情がある女たちであることは間違いない。見習い医者の信次郎がひょんなことから駆け込み寺に診察にやってくる。ここで、女たちが男のにおいがするということで騒ぎ出す。いくらなんでも極端すぎないか?と思う流れだ。ワケあり女たちの人生再出発の物語だ。
■ストーリー
質素倹約令が発令され、庶民の暮らしに暗い影が差し始めた江戸時代後期。鎌倉には離縁を求める女たちが駆込んでくる幕府公認の縁切寺、東慶寺があった。但し、駆け込めばすぐに入れるわけじゃない。門前で意思表示をした後に、まずは御用宿で聞き取り調査が行われるのだ。戯作者に憧れる見習い医者の信次郎は、そんな救いを求める女たちの身柄を預かる御用宿・柏屋に居候することに。
知れば知るほど女たちの別れの事情はさまざま。柏屋の主人・源兵衛と共に離婚調停人よろしく、口八丁手八丁、奇抜なアイデアと戦術で男と女のもつれた糸を解き放ち、ワケあり女たちの人生再出発を手助けしていくが、ある日、二人の女が東慶寺に駆け込んできて…。
■感想
駆け込み寺にやってくる女たちにはそれぞれ事情がある。寺に駆け込みさえすれば、一旦は守られる存在となる。どんな暴力亭主や、暴れん坊の侍がやってきたとしても駆け込み寺はアンタッチャブルな領域となる。女は別れたいが男は別れたくない。
今でいうダメ夫から逃げ出す妻という図式なのだろう。江戸時代からそのような場所があることに驚いた。そして、公的な補助があることや、24ヶ月寺で過ごしたあかつきには、夫と離縁し、晴れて自由の身となれる。
見習い医者の信次郎が良い味をだしている。口から生まれたような男で、あらゆる場面をその話術で乗り越えてしまう。妻を返せと乗り込んできたチンピラたちを話術で追い出してしまう。逃げ込んだ女たちが生活する駆け込み寺は、それなりにインパクトのある環境だ。
女だけが生活する寺。そこは男子禁制で、例え医者だろうと目を開けて診察してはならない。かなり無茶な状況だが、女だけの世界ならではのイザコザもある。信次郎が寺にやってきた際に、男のにおいがすると騒ぎ出すあたり、そこまでの環境か?と思わずにはいられない。
晴れて務めを果たした女たちは、その後どうするのか。新たな出会いを求める者もいる。ただ、駆け込み寺での過酷な生活を考えると、もう二度と結婚などしないのではないかと思えてくる。男に自分が弱っていく姿を見られたくないために、わざと駆け込み寺に入る女。
暴力夫から逃げ出したはいいが、寺から出る頃になると夫は回心し良い夫になっていた女。父親の仇である男から逃げ出し、最後には復讐を果たす女。多種多様な女たちの中で、信次郎の口から生まれたようなキャラだけが異彩を放っている。
江戸時代から女が夫から逃げ込む先があったことに驚きだ。
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