海洋天堂


 2017.1.26      自閉症児は純粋だという前提が必要 【海洋天堂】

                     
評価:3.5

■ヒトコト感想
自閉症の息子・大福と暮らすシンチョン。自分が末期がんと知り、大福がひとりで生活できるよう奔走する物語だ。なんだろう、障碍者を扱う物語となると、ある程度想定はできる。大福が清く正しい心で純粋という前提がなければ感動できない作品だろう。シンチョンが大福に、生活するために必要なことを必死で教え込もうとするがうまくいかない。

いずれシンチョンは死ぬ。ただ、その死ぬ時期が想定よりも早いというだけで、いつかこの問題にぶち当たるはずだ。周りの協力により大福は幸せに暮らせている。が、シンチョンがいなくなった瞬間からどうなるのか。大福が純真無垢な表情を見せてはいるが、時折ヒステリックに叫ぶ場面は、理解できないだけに恐ろしさを感じた。

■ストーリー
妻に先立たれ、自閉症の息子を男手ひとつで育ててきたシンチョンは、自身がガンで余命わずかと知り心中を図るが失敗。死が近付き、彼は息子にあることを教えようと決意する。

■感想
障碍児を育てる親というのは、いつか自分が死んだとき、だれがこの子を面倒みるのだろうと不安になる。本作のシンチョンも、自分が想定よりも早く死期が近づいていることを悟りあせりだす。裕福な家庭であれば良いのだが、シンチョンは裕福ではない。

水族館の清掃係りであるシンチョンが、周りの協力を得ながら大福を独り立ちさせていく物語だ。シンチョンが末期がんと知ると周りは同情の目を向ける。が、大福を引き取ろうとする者はいない。皆、偽善者ではなく真に良い人たちなのだろう。だからこそ、安易な答えはできないということだ。

大福へ日々生活するために必要なことを教えるシンチョン。タマゴの割り方から始まり、バスの乗り降り、そして水族館で自分がしていた仕事を大福にやらせようとする。それらがことごとくうまくいかない。このままでは大福はどうなるのかと、絶望の表情をするシンチョン。

怒りの思いがわきあがり大福にどなってしまうのは当然だろう。が、大福が落ち込んだ表情を見せると、とたんに自分の過ちに気づくシンチョン。自閉症児は周りが見えず自分だけの世界に閉じこもる。その幸せさを語るシンチョンの姿は、強烈にさみしそうに見えた。

シンチョンが死んだあとの大福の行動は涙を誘う流れだ。大福の面倒をみてくれる施設が見つかり、安心するシンチョン。そして、シンチョンがいないことを理解しているのかいないのか。ひとりでタマゴを割り、バスに乗り移動し、水族館で清掃の仕事をする大福。

何が大福を変えたのか。シンチョンがいなくなったことを理解しているとは思えない。が、何かしら変わらなければならないと大福は思ったのだろう。この手の作品では、ある程度先が予想でいてしまう。それでも泣けてくるのはすごい。

大福の純粋な表情が心を打つからだろう。



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