2015.4.23 鳥獣戯画的? 【かぐや姫の物語】
■ヒトコト感想
日本人ならば誰もが知っているかぐや姫を映画化。知る限り、ほぼそのまま、多少の肉付けはされているが王道のかぐや姫だ。絵柄が普通のアニメとは違い、水彩画で描いたような雰囲気がある。そして、動きのあるシーンでは、水彩画の線が荒くなり、絵自体も荒くスピード感を表現している。なんとなくだが、鳥獣戯画のように思えてしまった。
独特な絵柄は見ているうちに慣れてくる。ストーリーはかぐや姫。となると、どのような気持ちで見るのか…。かぐや姫のストーリーを追いながら、純粋に楽しむことができた。かぐや姫自身の心理描写を細かく描き、周りの人々の思いも描く。必然的にラストのかぐや姫が月に帰る場面では、感動が押しよせてくる。
■ストーリー
高畑勲監督が「竹取物語」を題材に、誰もが知る“かぐや姫”の筋書きはそのままに、かぐや姫の「心」を描いた劇場アニメ。かぐや姫がどうやって地球に生まれ月へ帰って行ったのか、姫の犯した罪とは何かなど、知られざる“真実”を映し出す。
■感想
最初に「竹取物語」の序文が流れると、ふと、学生時代を思い出してしまった。古文の授業で暗唱した文章がツラツラと流れていく。誰もが知るかぐや姫を映画化することは、かなりチャレンジのような気がした。まずストーリーで引き付けることが難しい。
結末がどうなるかは知られており、目新しさはない。新しさはないが、誰もが知るかぐや姫をどのように描くのかは興味がわいてくる。序盤は想定通りだが、村人たちとの交流や、かぐや姫の成長が早いなど、ほのぼのとした中での面白さに満ち溢れている。
ガッツリと竹取物語を覚えている人は少ないだろう。本作でも、かぐや姫を手に入れようとする男たちが、どのような行動にでて、どんな結末となったかの部分は新鮮に感じた。男たちが必死になりつつも、かぐや姫は、誰かひとりには気を許すのでは?と思ってしまった。
このあたりでは、かぐや姫の思いがよくわからない。都での生活を嫌がっているのはわかる。名付けの儀式の最中に、屋敷を抜け出し、着物を脱ぎ散らかしながら山までひたすら走り続ける。結局のところ、都にいるしかないと分かった時のかぐや姫の表情が秀逸だ。
ラストのかぐや姫が月に帰る場面は、ものすごく宗教的雰囲気を感じてしまった。雲に乗ってやってくる月の使者たち。中央には大仏のような見た目の存在があり、かぐや姫を警護する者たちは、たちまち眠りに落ちてしまう。かぐや姫の悲しみよりも、月の使者たちのいでたちの方が気になってしまった。
奇妙な音楽を奏でながら、雲に乗りふわふわと漂う。かぐや姫の両親がどれだけ懇願しようとも、かぐや姫は月に帰ってしまう。昔は何も考えずに受け入れていたが、なんのためにかぐや姫が地球に来たのか、疑問がわいてきた。
竹取物語を長編アニメ化する勇気がすばらしい。
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