ジャッジ!


 2015.4.9      製作現場の心からの叫び 【ジャッジ!】

                     


■ヒトコト感想

広告代理店の下っ端が、理不尽なクライアントの要求に振り回され、自分勝手な上司に良いように扱われ、同期にはゴミのように扱われる。本作の主人公である喜一郎がたずさわるCM制作現場の大変さは十分伝わってくる。特にクライアントの要求には、どんなとんでもないものでも受け入れるしかない状況はつらい。

それまでプロたちが力を注いで作り上げたCMが、素人のおじさんの一言ですべてがひっくり返る。理不尽なことこの上ないが、これがサラリーマンの辛いところだ。喜一郎は上司の勝手で、CMコンテストの審査員となり、海外の曲者クリエイターたちと相対する。モノづくりに対するこだわりが、製作者側から強いメッセージとして伝わってくる作品だ。

■ストーリー

広告代理店・現通で働く太田喜一郎(妻夫木聡)は、情熱は人一倍、でも腕はイマイチという落ちこぼれクリエイター。お人好しな性格が災いし、いつも身勝手な上司・大滝一郎(豊川悦司)の尻ぬぐいをさせられてばかり。

ある日、太田は大滝から、サンタモニカ広告祭の審査員役を押し付けられる。毎夜開かれるパーティーにパートナーの同伴が必要と知った太田に頼まれ、仕事はできるが、ギャンブル好きの同僚・大田ひかり(北川景子)もイヤイヤながら“偽の奧さん"役として広告祭に同行することになった。

■感想
作中で登場するCMコンテストのエントリー作品の中で、鍵となるトヨタのCMは、作中での評価は高いが、同じく見ていても非常に魅力的なCMに思えた。恐らくだが、かなり力を入れて作ったのだろう。本作がCM製作現場での、クライアントに対する溜まったうっぷんを放出しているように思えてしまう。

とりわけ、バカ息子が適当に作ったちくわのCMがコンテストで優勝しないと首だなんてのは、横暴でしかない。ちくわのCMがクソみたいなCMというのが、かなり強烈に皮肉っている。

基本コメディで、喜一郎が他の審査員に対してペンを回しながら深刻そうな表情でぼそりと一言つぶやくのが最高に面白い。まったく大したことを言っていないのだが、その言葉のトーンとペン回しに魅了された人々は、さも素晴らしい言葉のように大絶賛する。

喜一郎がCMコンテストの不正に対して、ひとり良いものは良いとアピールすることが本作で一番言いたかったことなのだろう。もしかしたら、本作の制作側で、何かしら政治的な判断でCMコンテストの優勝が決まったことを経験しているのだろうか。

登場キャラクターは濃い。売れっ子たちがコメディ全開で暴れまわる。強烈なインパクトはないが、主張することが明確なのでわかりやすい。有名クリエイターたちが、必ずしもすべて能力が高いわけではなく、政治的な駆け引きで自分の地位を上げている。

特に喜一郎の上司である大滝が、まるで風になびく凧のように、良くなりそうな場所へ右へ左へ動き回るのが強烈だ。秘書から「サイテェー」と言われようと、日焼けしたアロハシャツを着た男は、まったく意にかえさずわが道をいく。このいかにも業界人風で面の皮が厚いのが良い。

誰もが思い描くCM業界の裏側を、面白おかしく描いている。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp