人類資金6 福井晴敏


 2015.1.24      一発逆転のチャンスは? 【人類資金6】

                     

福井晴敏おすすめランキング


■ヒトコト感想

ラストへ向けて、すべての準備を整えるといった感じの回だ。笹倉家の当主が、過去を回想しM資金を管理するに至る状況を思い出す。現在に至るまでに様々な犠牲があり、それらを思い出しながら困難な現実へと立ち向かう準備をする。本庄が暢人の計画に賛同した理由や、過去のしがらみなど、M資金に関わった者たちの不幸な運命が語られている。そして、美由紀がなぜ暢人の手助けをしようとしたのかも語られている。

暢人が財団に捕まり、すべてが終わったと思わせておきながら、本庄の言葉から何か一発逆転のチャンスがあると匂わせる。この流れから壮大なラストへと繋がるのだろう。まだ、暢人たちがやろうとしたことの真相は判明していないので、次巻に期待して良いのだろうか。

■ストーリー

暢人は捕らえられた。それを黙って見送るしかなかった石、人生最後の猶予を与えられた本庄、帰国と同時に美由紀に拘束された真舟。絶体絶命の男たちはそれでも暢人を救うため、そして『人類資金』を未来につなげるために、ある戦いを挑む。巨大な敵を相手にわずか三人―暢人を、そして世界を救えるか?

■感想
物語のラストへと続く準備段階。本庄、美由紀、暢人がどのようにしてM資金と関わってきたのかが語られている。また、過去に財団に殺された身内についても語られている。それらの情報より、M資金が笹倉家と切っても切れない関係にあると印象付けている。

財団の殺し屋の魔の手が迫りつつも、どこか人生を諦めたようにも見える本庄。そして、暢人を助けようとしたが結局のところ暢人と敵対する形になってしまった美由紀。どこかで歯車が狂ったのか、それとも必然なのかは、最後にならないとわからない。

前半は笹倉家とM資金の関わりについて語られ、そこから真舟と石の動向へと移っていく。どっちつかずの状態であった美由紀を再び暢人側につけるためには、ある程度の衝撃的な出会いが必要なのだろう。そこで再び真舟と石のコンビが大活躍する。

組織的にはまったく財団には歯が立たないヤクザ組織を使い、真舟と石が暢人の救出作戦へと動き出す。ラストへつながる布石としては、本庄の言葉がすべてなのだろう。財団も見逃す何かがまだあるということだ。

壮大な物語のラストへと続く物語として、今までの総括的な意味合いが強い。M資金と笹倉家の説明の回といっても良いだろう。M資金を管理する宿命を背負わされた者の苦悩と、世界を変えようと目指す男。本作までで暢人がやろうとしたことのすべてが説明できているとは思わない。

ラストでは、M資金を使った壮大な計画が暴露されるのだろうが、結末が見えてこない。ここまで大きく広げた風呂敷をどのようにして綺麗にたたむのか、それも気になるところだ。

最終巻が待ちどおしくて仕方がない。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp