人類資金0 福井晴敏


 2016.1.16      人類資金ファン必読のプロット集 【人類資金0】

                     
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■ヒトコト感想

人類資金のオマケ的位置づけの作品。作者が描いたプロットにコメントがついている。それは、プロットを作成時に作者が考えたことが、事細かに描かれている。ひとつの作品を作るためにどれだけ調査が必要かがよくわかる。作中で株の仕手戦の描写があれば、株について勉強し難解な用語を読み込んだりもする。

本作のようにM資金という過去のいわくを描く必要があるならば、その時代をつぶさに調査する。やはりプロの作家がひとつの作品を作り上げるまでの強烈な仕事量というのを思い知らされる部分だ。小説版と違い、よけいな心理描写はカットされているのでサクサクと進む。あらすじだけを読みたい人にはうってつけの作品だ。ただ、全体の雰囲気を知るには小説を読む必要がある。

■ストーリー

執筆に先立って書かれたプロット(あらすじ)を完全無修正で全文収録、さらに著者による創作秘話満載のdeepなテキストコメンタリー66項目!

■感想
人類資金は小説と映画がある。作者が描いたプロットをすべて収録している本作。小説は読んでいるが、映画版を見ていない自分としては、映画に向けてどこが予算の関係でカットされただとか、配役ありきでキャラクターが決められたなど、非常に興味深いコメントが多々ある。

特に、ひとつの設定について描くために、膨大な調査が必要で、作者自身も勉強が必要だと言う部分に衝撃をうけた。ちょこちょこっとネットで知識を仕入れて、さもそのあたりに詳しいように描いているのかと思っていた。プロの作家の大変さというのがよくわかる部分だ。

あらすじなので、小説や映画をみていなくとも、人類資金の世界がすべてわかるようになっている。ただ、あくまでもあらすじなので、細かな描写が描かれておらず、小説と比べるとうすっぺらく感じてしまう。ひとつの場面にしても、細かな動きが伝えられる小説と比べると、あっさりとした記述で終わっている。

結果だけ知るという意味では効果的だ。映画版を見ている人ならば、頭の中にその場面を思い浮かべることができるので、問題はないのかもしれない。映画か小説を読んでいることを前提とする作品だろう。

ラストの展開が映画版とは異なるらしい。映画の配役を思い浮かべながらプロットを読んでいくと、すんなり頭に入りやすい。映画版はあまりヒットしなかったらしいが、作品を作るのがどれだけ大変で、ひとつの場面について予算や役者の日程など、様々な要素で泣く泣くシーンをカットするというようなことがあるのだろう。

何年も前から力をいれてきた作品がやっとのことで上映されたとしても、周りから酷評を受けるのはかなり辛いだろう。結果がすべての世界だが、人気商売の辛さというのを改めて感じてしまった。

映画か小説を読んでいることを前提としたプロットだ。



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