池袋ウェストゲートパーク12 西一番街ブラックバイト 石田衣良


 2016.12.29      ユーチューバーの実状は衝撃的だ 【池袋ウェストゲートパーク12 西一番街ブラックバイト】

                     

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■ヒトコト感想
IWGPシリーズの第12弾。時事ネタを扱いマコトとGボーイズが活躍する。いつものパターンと言ってしまえばそうだが、テーマが新しいので新鮮な気持ちで読むことができる。今回は、ユーチューバ―やブラックバイトなどここ数年キーワードとしてメディアに登場してきたものをテーマとしている。巷で話題になった物事をそのまま小説のネタとできるのはこのシリーズの強みだろう。

実在する企業などを想定させるような描かれ方をしており、かなり大げさに脚色されてはいるが、「もしかしたら、あの企業でもこんなことが?」と想像してしまう。時事ネタを扱うだけに、賞味期限切れの危険性もあるが、シリーズのファンとしては楽しめる流れだ。

■ストーリー
過酷な労働を強いられ、辞めることもできない。若者を使い潰すブラック経営者に、Gボーイズが怒りの声をあげる!多くの飲食店を経営するOKグループが若者を使い潰す方法は、“憲兵”が脅し、“腐った五人”が痛めつけること。池袋にはびこるブラック企業に、マコトとタカシが立ち向かう。

■感想
美容整形に依存する女をテーマとした短編では、女性の美への追及について作者なりに問題提起している。他人からすると十分美人な容姿だとしても、本人がコンプレックスと思い込むとどうにもならない。美容整形を繰り返し、逆に顔面を崩壊させる危険性もある。

美容整形がすべて悪という描き方はしていない。が、作中に登場するのは相手のコンプレックスを刺激し、次々と美容整形へ送り込むという非常にあくどい商売をしている。世間の報道が美への追及に拍車をかけているのだろう。

ユーチューバ―を扱った短編もある。これこそいかにも新しい題材だ。素人が動画をネット上にアップさせ、視聴者を増やして金を稼ぐ。そのプレッシャーは相当なもので、大金を稼ぐためには毎日刺激的な動画をアップし続けるしかない。そしてエスカレートする動画。

さらには報酬が一律に下げられたとしても、それについて文句は言えない。なんだか華やかそうに見えるユーチューバ―の実情を鋭く突いているような気がした。ある意味現実とリンクした短編なのだろう。

ブラックバイトを扱う短編は、話題になった企業を元にしているのだろう。それをさらに激しく誇張したバージョンだ。ブラックバイトの定義が微妙なので、本短編では正社員が辛い目にあい、逃げ出したくても逃げ出せないという要素をブラックバイトに見立てている。

従業員が自殺騒ぎを起こす。が、経営者だけは耳に心地よい言葉を発するだけで、末端の社員たちの地獄のような苦しみに目を向けることはない。まさに、よく報道で目にするパターンだ。

現実で起きている問題をいち早く作品に取り入れるのはすばらしい。



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