2017.3.30 ダメ人間のフォークシンガー 【インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌】
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 [ オスカー・アイザック ]
評価:3
■ヒトコト感想
フォークシンガーのルーウィンの物語。金がなく知り合いの家を泊まり歩き、女友達に手をだして妊娠させてしまう。各種のトラブルから逃げるために旅に出るのだが、そこでもうまくいかない。ルーウィンの放浪の旅物語といっていいだろう。ギター片手に貧乏旅を続ける。そこでは風変りなミュージシャンと悪夢のようなドライブや、ヒッチハイクした車を運転中に動物をひき殺したりと、ルーウィンの災難は続く。
ルーウィンが最終的にどのようになりたいのかがよくわからないが、食うために船員になろうとするのだが…。ライブハウスでフォークライブをやることさえままならない男。うまくすれば有名プロデューサーに気に入られ、デビューできたはずなのだが…。変なプライドが最後までルーウィンの成功を阻んでいる。
■ストーリー
物語の舞台はまだマスコミやレコード会社などが発達していなかった1961年、NYのグリニッジ・ヴィレッジ。ライブハウスで歌うフォーク・シンガーのルーウィン・デイヴィスは、最近何をやっても裏目に出てばかり。一文無しで知り合いの家を泊まり歩く日々。つい手を出した女友達からは妊娠したことを告げられ、おまけに仕方なく預かるはめになった猫にも振り回される始末。
山積みになったトラブルから逃げ出すようにルーウィンはギターと猫を抱えて人生を見つめ直す旅に出る…。ジャズ・ミュージシャン、ローランドとの悪夢のようなドライブ、歌への信念を曲げれば成功するかもしれなかった有名プロデューサーのオーディション、年老いた父との再会の末、とうとう歌をやめて父と同じ船員に戻ろうと決意するが、それさえもうまくいかない。
旅から戻りあらゆることに苦しめられ打ち拉がれたルーウィンはまたNYのライブハウスにいた。歌い終えたルーウィンがふとステージに目をやると、そこにはやがてフォークの世界を大きく変えることになる無造作な身なりの若者、ボブ・ディランらしきシンガーの姿が。同じような日々がまた回り始めたかのようにみえるルーウィンの人生。しかしその外側で、彼の想いを受け継いだかのように、新しい時代がすぐそこまでやってきていた……。
■感想
冒頭、知り合いの家で眼が覚めるルーウィン。ここですでにダメ人間の雰囲気が漂っている。遅く起きて勝手に朝食を作り部屋を出る際に、飼い猫が外に逃げてしまう。ルーウィンがどのような人物なのか、最初の一場面でだいたいわかってしまうからすごい。
そこから、ルーウィンが過去にフォークのコンビを組んでおり、レコードを出していたことがわかる。ルーウィンはどれほど音楽の才能があるのか。女友達を妊娠させ、激しく非難される。仕事もせずにフラフラとライブハウス巡りをする。この流れはそれなりにインパクトがあるのは間違いない。
数々のトラブルから逃げ出すように旅にでるルーウィン。ここでも個性豊かな者たちとのヘンテコな旅となる。ジャズ・ミュージシャンのローランドとのドライブは強烈だ。ルーウィンがフォークをやっていると知りながら、フォークをこれでもかと馬鹿にする。
ルーウィンがどこまでフォークに自信があるのかわからないが、いざとなると気の弱いところがあるのも確かだ。ルーウィンのキャラクターは憎めない。もっとしっかりしろ、と思うのだが、どことなく母性本能をくすぐるような表情をしているのだろう。
ルーウィンは自分がフォークで売れないことを、常に誰かのせいにしているように感じた。有名プロデューサーからルーウィンの実力が認められ、バックでハモリをするのなら良いと言われたが、変なプライドから断ってしまうルーウィン。
出演するチャンスがあるライブハウスでは、おばさんにひたすら野次を飛ばしまくり、別の日におばさんの旦那にぶちのめされてしまう。ルーウィンのみじめな状況は、結局のところ最後まで変わることはない。ルーウィンが最後に大成功したりすると、とたんに嘘くさく感じてしまうのは確かだろう。
ルーウィンのみじめな雰囲気は良い。
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