2015.1.3 相手の心を操作する能力 【偉大なる、しゅららぼん】
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■ヒトコト感想
まるでマンガのような物語だ。特殊能力を持った一族がおり、同じように力を持ち反目する別の一族が存在する。琵琶湖周辺で巻き起こる不思議な出来事は、超能力を駆使した物語が半分、特殊な一族の生活の奇妙さが半分といった感じだ。金ですべてを制圧してしまう日出家。そこにやってきた日出涼介と、跡取り息子の淡十郎の不思議な物語だ。
まず、淡十郎のキャラがすさまじい。生まれた時から殿様気質。人に敬われるのが当たり前で、少しでも悪口を言われようものなら、大人の力で殲滅してしまう。典型的なおぼっちゃまでありながら、どこか冷めた殿様だ。淡十郎と比べるとまともな涼介も、特殊能力を持つことにより、少しだけ性格はいびつになっている。なんだか不思議な物語だ。
■ストーリー
高校入学を機に、琵琶湖畔の街・石走にある日出本家にやって来た日出涼介。本家の跡継ぎとしてお城の本丸御殿に住まう淡十郎の“ナチュラルボーン殿様”な言動にふりまわされる日々が始まった。実は、日出家は琵琶湖から特殊な力を授かった一族。日出家のライバルで、同様に特殊な「力」をもつ棗家の長男・棗広海と、涼介、淡十郎が同じクラスになった時、力で力を洗う戦いの幕が上がる…!
■感想
日出家には相手の心を操作できる特殊能力を持つ子供が稀に存在する。対して棗家には人の行動を操作できる特殊能力を持つ子供がいる。琵琶湖を中心とした地域で巻き起こる、特殊能力にまつわる不思議なお話。まず淡十郎の個性が際立っている。
小太りで気難しい。周りからは日出の跡取りということで恐れられている。そのことを知らずに淡十郎を攻撃した者には、とんでもない仕打ちが…。典型的な厭なやつだ。金の力に物をいわせて周りを黙らせる。ひとりだけ真っ赤な制服を着るなんてのが、そもそも異常だ。
淡十郎に翻弄される主人公の涼介。涼介目線で始まる物語は、棗とのいさかいや、ちょっとした恋愛模様など、普通の学園ラブコメ小説風でもある。ただ、根底には日出家という特殊な環境と、特殊能力をもつことが、何かにつけて障害となる。
物語の中盤までは、複雑な環境に置かれた涼介の困惑と苦悩が描かれている。それが中盤以降、圧倒的な力をもつ校長が登場することにより、まさにマンガ的な展開となる。強大な力を前にして、日出家と棗家は協力することになる。
タイトルにある「しゅららぼん」というのは、日出家と棗家の能力がバッティングした際に発する音だ。キャラクターたちのどこかのんびりした雰囲気は、作者のキャラクターそのままだろう。特殊能力に関しても、それを嬉々として使うのではなく、どこか迷惑に感じている。
日出家に生まれた宿命の重さを感じつつ、それを感じさせない軽さが作品全体を覆っている。物語のピークは校長が突然その力を示し始め、対抗するために、日出家と棗家が協力する場面だろう。
ホルモーといい、作者は日本語に存在しないタイトルをよくつける。
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