星守る犬


 2016.12.28      どうにも自業自得に思えてしまう 【星守る犬】

                     


■ヒトコト感想
北海道の山中に放置された身元不明の死体。役所に勤務する奥津が、残されたレシート二つを頼りに死体の身元を探る物語だ。男と犬が歩んできた道のりを奥津がたどるちょっとしたロードムービー的な雰囲気がある。奥津の車に強引に乗り込むオーディションに落ちた女子高生が良いアクセントとなっている。男の犬との車によるふたり旅。

当初はその目的はわからなかったが、終盤にすべてが明らかとなる。ある意味男の自業自得のように思えてしまう。病気、失業、離婚、家族がバラバラになったのは、男にも原因がある。最後は犬と共に車の中で死んでいく。まるでフランダースの犬的な展開だが、そこまでの感動はない。どうしても自業自得の思いが、頭の隅にこびりついて離れない。

■ストーリー
北海道の山中に放置された車両内にて、死後半年経った身元不明の男性と死後一カ月の犬の遺体が見つかる。市役所福祉課に勤務する奥津京介は、わずかな手がかりを元に、男と犬がやってきた道を遡る旅をはじめる。旅を進めるにつれ、その男・おとうさんが病気、失業、離婚、一家離散の挙句家までも失い、唯一傍にいてくれた愛犬・ハッピーとともにオンボロ車で旅に出たことが明らかになる。

奥津は、これまでの自身の孤独な人生に想いを馳せ、おとうさんとハッピーに、自分とかつての愛犬クロを重ね合わせてゆく。奥津の旅が終わりをむかえる時、おとうさんとハッピーがどのような最期を迎えたのかが明らかになる――。

■感想
身元不明の死体が北海道の山奥で見つかった。役所の職員である奥津は、身元がわかるものを探し、身内へ連絡をとろうとするのだが…。まず奥津のキャラが物静かで、本ばかり読んでいるキャラクターとなっている。

死体の素性が気になり、なぜか有給をとって調査に向かう奥津。そこでアイドルのオーディションに落ちてへこんでいる女子高生と出会う。半ば強引なふたり旅。身元不明の男のたどった旅と同じルートで男の身元を探ろうとする。一風変わったロードムービー的な展開だ。

男は犬のハッピーとバンに乗って旅を続ける。最初は旅館に泊まったりしていたが、そのうち資金が底をつき車の中で眠るようになる。なぜ男が犬と車で旅を続けているのか。中盤まで理由がわからないまま、男の旅をトレースすることになる。

その後、男と交流をもった人々から話を聞くことができ、男の境遇をすこしづつ知ることができる。中盤までは、なぜ旅をしているのか?という疑問が強く、その答えを求める物語かと思っていた。が、終盤になるとあっさりと理由が語られることになる。

男は病気、失業、離婚、一家離散を経験し、逃避先として唯一自分になついている犬と旅をすることになる。物語上は感動の流れとなってはいるが、どうにも自業自得に思えてならない。病気、失業はしょうがないとして、離婚は男の家族に対するケアの仕方によっては防げたことだろう。

一家離散についても、男がもう少し奥さんや娘のことを気にかけていれば、違った結末になったのだろう。すべてを失った男が、犬とふたりで死に場所を求めるような旅をする。同情すべき部分はないように思えた。

ラストの感動場面をどんな感情で見れば良いのか微妙だ。



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