ほんとうの花を見せにきた 桜庭一樹


 2015.3.24      どこか、同性愛的な雰囲気を感じる 【ほんとうの花を見せにきた】

                     
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■ヒトコト感想

竹から生まれた吸血鬼バンブーに関連する物語。竹から生まれた以外は、ほぼ吸血鬼と同じ性質をもつバンブー。太陽の光に弱く、人の血を吸い、百年以上は生き続ける。バンブーと人間との交流を描いた中編から始まり、表題作である「ほんとうの花を見せにきた」という短編があり、最後にバンブーの統領たる男の過去を描いた短編が続く。

バンブーと人間の子供の交流は、バンブーがまるで人間の親のように子供の成長を喜び、子供を守ろうとする。となると、バンブーの世界では異端扱いとなり、壮絶な制裁が待っている。特殊なのは、自分の姿が鏡に映らないため、パートナーのいないバンブーは、身なりが汚いという部分だろうか。

■ストーリー

少年「梗」を死の淵から救ったのは、竹から生まれた吸血鬼バンブーだった。心優しきバンブーと、彼に憧れる梗との楽しくも奇妙な共同生活が始まる。だが、バンブーにとって、人間との交流は何よりの大罪であった。

■感想
竹から生まれた吸血鬼というのはイメージが難しい。バンブーの世界の掟では、生きている人間から血を吸ってはならないらしい。それを破ると…。死人から血を吸うバンブーと人間の少年が一緒に住み、交流する。殺し屋に狙われていた少年が女装し、美しいバンブーたちと交流を深める。

いかにも桜庭一樹が描きそうな流れとなる。パートナーが存在するバンブーはお互いの身だしなみを整えるため、向かい合って身づくろいをする。なんとなくだが、同性愛的なにおいを感じるのは気のせいだろうか。

「ほんとうの花を見せにきた」は、バンブーが死ぬ間際に咲かせる花のことをイメージした作品だ。百年以上も生きるバンブーが、死ぬ間際に咲かせる白い花。人よりもはるかに長い期間生き続けるバンブーにとって、人はパートナーとはなりえない。

前の中編が、どこか男同士でありながら背徳的なにおいを感じさせていたのにくらべ、本短編は女同士となる。罪を犯したバンブーが厳しい制裁を受けるのは、前の短編からも明らかで、そんな状況をかえりみずに自分の信念を貫く女バンブーの生き様が描かれている。

ラストの短編は、バンブーの厳しい規則を作った、長たる存在がどのようにして生まれたかが描かれている。人間に追われ、海を渡りやってきたバンブー。竹の吸血鬼であろうとも人間の大群にはかなわない。バンブーの厳しすぎる規則により、前2編のバンブーたちは苦しんできた。

そんな悪しき規則のように思われたものが、どのような経緯で作られたかが語られている。バンブーのルーツを探るような物語だ。どこか吸血鬼のルーツに近いものがあるが、明らかに意識しているのだろう。

竹の吸血鬼というのは、正直イメージしずらい。



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