炎の戦線 エル・アライメン


 2016.11.16      過酷な砂漠で戦う兵士たち 【炎の戦線 エル・アライメン】

                     


■ヒトコト感想
北アフリカの砂漠で苛酷な戦いを繰り広げるイタリア軍を描いた作品。圧倒的優勢な英軍と、交代要員がなくひたすら砂漠で待機させられ続けるイタリア軍。志願兵のセッラが経験する砂漠での戦いが描かれている。英軍との激しい戦い描写は少ない。あるのは過酷な砂漠で、どのようにして生き残るかということと、英軍に空爆されひたすら逃げ惑う姿だ。

水も食料も不足した状態で、補給もままならない。兵士たちの士気は落ち続け、イタリア軍がそこにとどまる意味があるのかも微妙となる。結局のところ上層部から指示されたことに従うしかない。砂漠の中をひたすら歩き続ける描写が印象的だ。いち兵士たちではどうにもできないやるせなさを感じてしまう。

■ストーリー
使命感に燃える大学生のセッラは軍に志願し、北アフリカ戦線でイギリス軍と対峙しているパヴィア歩兵師団第27連隊に配属される。しかし着任早々近くを歩いていた伍長が砲撃で戦死してしまう。配属先の陣地も装備が不足し、満足な補給も受けられず、飲み水にさえ事欠く劣悪な環境だった。そんな中、日々の小競り合いで味方は次々と倒れていく。

■感想
志願兵のセッラが経験する戦争は過酷だ。いきなり配属された先で、案内役の伍長が爆弾により跡形もなく消し飛んでしまう。運よく生き残ったセッラは、砂漠の過酷さを知る。兵士たちが真水をほとんど飲んでおらず、尿を濾過したものを飲んでいる。

粗末な食べ物しかなく、日々を砂漠の中で過ごすしかない。戦争映画だが、戦いの描写はあまりない。ジリ貧のイタリア軍に英軍が激しい空爆を浴びせかけるだとか、銃弾で仲間が負傷する場面はあるが、基本は砂漠の過酷さが描かれている。

戦時中、ひとつの部隊には詳細な情報が渡ることはない。そのため、セッラたちは命令がくるたびに目的もわからずに移動するしかない。退却を言い渡されても、車もなにもないため徒歩でひたすら砂漠を歩くしかない。かと思えば、ムッソリーニは靴を磨くために靴クリームをトラックで運ばせている。

怒り狂う兵士たち。このあたり、戦争における末端の兵士たちの悲惨さが描かれている。退却した先に何かがあるわけではない。そこには同じように負傷し疲弊した兵士がいるだけだ。

退却中に軍の幹部と出会う。そこで幹部は部下の死体を埋めるために砂漠にスコップで穴を掘り続けている。セッラたちが手伝うと言っても拒否する。身なりがきっちりとちした幹部が、沙漠のど真ん中にいるという違和感は、その後、その幹部が自殺することで事態の深刻さを表現している。

セッラたちは戦争で敵に撃たれて死ぬのではなく、砂漠で野垂れ死にそうになる。戦争は何も生み出さない。さらには砂漠という過酷な地で、末端の兵士たちの悲惨な状況がこれでもかと描かれている。

砂漠での戦いの過酷さが描かれた作品だ。



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