ヒミズ


 2017.1.17      ヤクザが最もまともに見えてくる 【ヒミズ】

                     
評価:3.5

■ヒトコト感想
マンガが原作の本作。そのマンガは稲中卓球部の作者が描いたものだ。ギャグからいきなりシリアスの、それも精神的に異常な者たちが登場する物語だ。主人公の住田は中学生で父親が子供に金をせびり、母親は男を作って出ていってしまう。住田はとんでもない環境で精神的におかしくなる寸前の状態だ。住田の同級生である茶沢が住田に必要以上に絡んでくる。

茶沢の家庭も悲惨な状態となり、住田と茶沢は親から死んでくれと言われてしまう。非常に精神的にこたえる作品だ。作中には異常な者たちが登場し、無差別に刃物で相手を切りつけたり、突然キレて相手を刺したりと、強烈な登場人物たちばかりだ。本来ならやばいはずのヤクザが一番まともに見えるという、ちょっと変わった作品だ。

■ストーリー
住田祐一、茶沢景子、「ふつうの未来」を夢見る15歳。だが、そんな2人の日常は、ある“事件"をきっかけに一変。衝動的に父親を殺してしまった住田は、そこからの人生を「オマケ人生」と名付け、世間の害悪となる`悪党'を殺していこうと決めた。自ら未来を捨てることを選んだ住田に、茶沢は再び光を見せられるのか ──。

■感想
住田と茶沢。普通の中学生としての生活ができていないふたり。ふたりとも両親に問題がある。茶沢は住田に救いを求め、住田の家に通うようになる。対して住田はむちゃくちゃな両親の元で、どこか精神的に異常な状態となっていく。

住田のボート屋の近くに住むホームレスたちは、ひたすら住田の未来を心配する。ヤクザから父親の借金のとりたてが住田に来たり、母親が男と出ていったり。父親にボコボコにされたりと住田の状況は悲惨としかいいようがない。そして、住田は衝動的に…。

住田が精神崩壊し、世の中にはびこる悪を倒そうと動き出す場面が衝撃的だ。人の精神が崩壊していく過程を見せられているようで強烈だ。そして、住田が町で出会う異常者も強烈だ。自分が何者かわからないと叫びながら、路上ライブのボーカルにナイフを突きつける。

バスのシルバーシートに座っていることをおばさんに注意されると、腹にナイフを刺す男。こんなのが身近にいたら怖くてしょうがないが、よくニュースなどで報道される無差別の通り魔殺人はこんな感じなのだろう。

精神的に壊れた住田が悪者を探して町を彷徨う時、父親の借金を請求しにきたヤクザと出会う。そこでの住田とヤクザのやりとりは衝撃だ。殺すぞと叫ぶ住田。殺せというヤクザ。いずれ誰かに殺されるヤクザだから、誰に殺されても良いと言うヤクザがやけにまともに見えた。

住田や茶沢の両親、その他の異常者たちと比べると、本来はクズ人間のヤクザの方がまともに見えた。ヤクザとの会話と、茶沢やホームレス仲間たちのおかげで回復していく住田。精神が崩壊しかけている人が見ると危険な作品だ。

受けつけない人もいるかもしれないので、注意が必要な作品だ。



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