蜩ノ記


 2016.2.25      切腹もいとわない侍たち 【蜩ノ記】

                     
蜩ノ記【Blu-ray】 [ 役所広司 ]

■ヒトコト感想
10年後に切腹することが決まっている戸田秋谷。ひそかに監視役を務める壇野。まず秋谷の潔さに心打たれてしまう。そして、檀野の正義を貫く姿勢もすばらしい。年貢取り立てが厳しい村で、領民のことを考えて行動する秋谷。領民とお目付け役の間でトラブルが発生し、秋谷の息子の友達が拷問で殺されてしまう。

そこから秋谷の息子が家老へ乗り込むのがすさまじい。その場に付き添う弾野の胆力もすばらしい。一歩間違えればその場で打ち首もありえる状況に、正々堂々とした態度でのぞむ。本作の中では、強烈に憎たらしい悪人はいない。家老でさえも、道理を理解し領民のためを思っての行動をする。すべての登場人物がすがすがしい。

■ストーリー

前代未聞の事件を起こした罪で10年後の夏に切腹すること、そしてその切腹の日までに、藩の歴史である「家譜」を完成させることを命じられた戸田秋谷(とだしゅうこく)(役所広司)。その切腹の日は3年後に迫っていた。

檀野庄三郎(だんのしょうざぶろう)(岡田准一)は、家譜編纂の作業から藩の秘め事を知ることになる秋谷が逃亡せぬよう監視せよとの藩命を受け、幽閉中の秋谷の見張り役として、秋谷の妻・織江(おりえ)(原田美枝子)、娘・薫(かおる)(堀北真希)、息子・郁太郎(いくたろう)(吉田晴登)と生活をともにし始める。

■感想
壇野は秋谷と生活を共にすることで、次第に秋谷に感化されていく。10年後に切腹するとわかっていながら「家譜」を完成させることに邁進する秋谷はすさまじい。そして、それを見張るはずの壇野もすがすがしい男だ。剣の腕がすばらしく、男らしく正しいことへ突き進む。

最も衝撃的なのは、秋谷の息子が殺された友の仇を打つために、家老の屋敷へ乗り込む場面だ。普通ならば、それを知った壇野は止める立場にあるはずが、一緒になって家老の家に乗り込む。そして、息子に剣を抜かせることなく納めてしまう。この流れが強烈にすばらしい。

年貢の取り立てに苦しむ領民。そして、どんな状況であっても、びた一文年貢をまけないお目付け役。村人と侍という対立の図式はできあがり、お目付け役は強烈に厭な存在となる。村人たちのちょっとした反抗が、その後様々な波紋を呼ぶことになる。

檀野と秋谷の息子が、家老の家を襲撃した罪で囚われの身となってからも、秋谷は落ち着いて行動する。ひとつのしっかりとした信念を胸に、死を恐れない男たち。作中に登場する男たちは、子供であってもどこかで、いつ死んでも良いと思っているような気がした。

作中の登場人物たちは、みな根本は良い人物たちだ。悪の権化と思われた家老であっても、檀野や秋谷の息子に対して、その場で打ち首にせず生かすことを選択する。そして、秋谷とのかけひきののち、領民たちが苦しんでいるのを知ると、心をあらためるようになる。

物語の序盤で秋谷が切腹することは避けられない、という流れである。が、檀野や秋谷の息子にも、武士としての名誉を守るためには、切腹することもいとわない気迫のようなものを感じてしまった。

いつ切腹を言い渡されてもおかしくない状況で、清々しく生きる侍たちの物語だ。



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